2024年の最低賃金、月額204ドルに決定

(カンボジア)

プノンペン発

2023年10月12日

カンボジア労働職業訓練省は9月29日、2024年の最低賃金を月額204ドルに改定する省令(Prakas No.283/23KP/PRK)を発表した。現行の200ドルより4ドル(2.0%)の増加だが、2023年の最低賃金引き上げ幅(6ドル、3.1%)よりも小幅な上昇となった(2022年9月30日記事参照)

新たな最低賃金は2024年1月1日から適用される。適用業種は従来どおり、衣料品や靴、かばんなどの製造業だが、他分野の製造業もこれにならっての適用されるのが通例となっている。

最低賃金額は、労働組合や雇用者団体(カンボジア縫製業協会、カンボジア製靴業協会、カンボジア日本人商工会など)、政府の3者からそれぞれ17人の代表者を選出して構成する最低賃金諮問委員会で議論する。今回は20回にもわたる協議の結果、202ドル、204ドル、213ドルの3案が提示され、9月28日の最終投票で51人中46人が202ドルに投票した。最終的にそこにフン・マネット首相が2ドルを上乗せすることで204ドルに決まった。

今回の決定を受け、カンボジア製靴業協会は、景気減速懸念が強まる中、経営側と労働者側の双方の要望のバランスを重んじた賃金設定だと話した。カンボジアでは欧米や中国の景気減速を受け、2022年8月以降、縫製品の輸出停滞が続いている。受注が戻らず、工場の閉鎖を決定した企業も出始めている状況だ。一方、2022年の物価上昇率は5.4%で、2023年は2.5%から3.3%の上昇が予測されている(注)。この物価上昇率と比べると、最低賃金の上昇率は小幅にとどまったといえる。

電力料金の一部引き下げで産業を支援

カンボジア電力庁は9月28日、工業と農業の生産拡大と雇用創出を目指し、10月から12月にかけて工業と農業の事業者を対象に、試験的に電気料金を最大2割引き下げると発表した。対象者は2万1,000社に及ぶと見込まれる。これはフン・マネット首相の指示に基づく政策で、主力輸出産業の経営を支える策としたい考えだ。

(注)2023年のカンボジアの物価上昇率は、アジア開発銀行(ADB)が3.0%、世界銀行が2.5%、IMFが3.0%、シンガポールにある国際機関「ASEAN+3マクロ経済調査事務局」(AMRO)が3.3%と予測している。

(山口乗子)

(カンボジア)

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