製造業のESG対応を支援する初の枠組み「i-ESG」を発表

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年10月04日

マレーシア投資貿易産業省(MITI)は10月2日、「国家産業ESG(環境・社会・ガバナンス)(i-ESG)フレームワークPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した(MITIプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。国内製造業企業が、ESG原則を導入し、12兆ドル規模のESG市場へ参入することを促すための新制度だ。

MITIは、i-ESGの目的を「製造業による持続可能な慣行への移行を加速する」ことだと説明。「規範」「資金調達」「能力開発」「市場メカニズム」の4本柱に基づく指針を提示し、製造業がESGの要素を事業に取り入れることを後押ししたい考え。テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は「新産業マスタープラン2030(2023年9月7日記事参照)が『ESGとは何か』を定める一方で、i-ESGは、企業がESGを『どのように達成するか』のロードマップとして機能する」と述べた。

製造業のESG対応を段階的に支援

i-ESGの「フェーズ 1.0」(2024~2026年)ではまず、ESGエコシステム構築の基礎準備と開発促進に取り組む。具体的には、企業が現在のESG対応水準を自己診断するESG対応評価(iESGReady)、および明確でユーザーフレンドリーな手順書であるi-ESGスターターキット(i-ESGStart)の導入により、企業のESG対応を支援する。またMITIは、2023年10月以降、計50社に対して個別相談会を実施し、持続可能性報告書を作成できるよう指導する。これにより、「フェーズ2.0」(2027~2030年)を「ESGの加速」期間に充て、より厳しい要求への対応も目指すとしている。

MITIは、i-ESGが「公正な移行」を原則としていることが重要なポイントだと強調した。特に中小零細企業が、即座に新たな基準に準拠することは困難とし、「誰も取り残されない」包摂性を重視するマダニ経済政策(2023年8月2日記事参照)の姿勢を、i-ESGにも反映したという。マダニ経済政策も含め、持続可能性やESGに関連するマレーシアの各種政策やロードマップは、i-ESG本文23ページ目以降にまとまっている。ザフルル氏は「段階的かつ進歩的アプローチこそ、持続可能な製品に対する需要の高まりと輸出市場から課されるESG報告義務(注)を満たすために、中小零細企業を含むマレーシア企業が必要としている『公正な移行』だ」と述べた。

(注)例えば、EUの炭素国境調整措置(CBAM)などを想定している。ザフルル氏は先に、MITIとして企業のCBAM対策を支援する考えを表明し、その文脈の中でi-ESGにも言及していた。i-ESG本文にも、4本柱の1つ「規範」の下、MITIや投資開発庁(MIDA)が主導し、欧州市場に輸出される製品の炭素排出量評価を実施することが記載されている。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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