ナビゲーターCO2、米中西部の大規模CO2輸送パイプライン建設計画の中止を発表

(米国)

シカゴ発

2023年10月26日

米国中西部で二酸化炭素(CO2)輸送パイプライン「ハートランド・グリーンウエー」の建設を計画していたナビゲーターCO2(本社:ネブラスカ州)は10月20日、同計画を中止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同社は、中西部5州(イリノイ州、アイオワ州、ミネソタ州、ネブラスカ州、サウスダコタ州)にまたがる全長1,300マイル(約2,092キロ)の大規模なパイプラインを建設し、合計21カ所以上のエタノール工場と肥料工場から排出されるCO2を回収してイリノイ州の貯留サイトで地下貯留する計画だった(2023年9月27日付地域・分析レポート参照)。同社は計画を中止した理由に、「特にサウスダコタ州とアイオワ州の規制や州政府の手続きが予測不可能なこと」を挙げている。

これに先立って、サウスダコタ州公共サービス委員会(PUC)は9月6日に、ナビゲーターCO2のパイプライン建設計画申請を全会一致で却下していた。メディア報道によると、同委員会は却下の理由として、同社が委員会の質問に対する回答に迅速さを欠いたほか、何度も異議を唱えたことや、パイプライン建設予定ルートについて土地所有者に通知するのに時間を要したことなどを挙げている(AP通信9月6日)。なお、中西部では、サミット・カーボン・ソリューションズ(本社:アイオワ州)も同5州にまたがる全長2,000マイル(約3,219キロ)のCO2輸送パイプラインの建設を計画しているが、9月11日にサウスダコタ州PUCに建設許可申請が却下されていた。同社は建設計画ルートを迂回(うかい)させるなどの計画変更を加えて建設許可を再申請し、9月15日に再申請が承認されたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

大規模なCO2輸送パイプラインの建設計画の頓挫について、メディアは、バイデン政権の気候変動戦略の柱の1つであるCO2の回収・貯留(CCS)事業の開発にとって、大きな後退となり得る上、CCSをCO2排出量削減のカギとしているエタノール産業界にとっても打撃となると報じている(ロイター10月20日)。

(星野香織)

(米国)

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