1~9月の台湾の対外直接投資、ASEANと米国向けが中国を上回る
(台湾)
調査部中国北アジア課
2023年10月26日
台湾経済部投資審議委員会の発表によると、2023年1~9月の台湾の対外投資は前年同期比2.2倍の200億1,028万ドルとなった。このうち、中国大陸向けを除く対外投資は前年同期比2.9倍の174億8,147万ドル、中国大陸向けの投資額は17.0%減の25億2,881万ドルだった。対ASEAN投資は40億3,278万ドルで、対中投資額を上回った(添付資料図参照)。国・地域別の首位は米国で、台湾積体電路製造(TSMC)のアリゾナ工場関連投資が後押しし、対米投資は95億9,341万ドルだった。
台湾の対外投資は、1993年に対中直接投資が解禁されて以来、2022年まで30年間、中国向けが首位だったが、ピーク時の2010年には83.8%を占めていた対中投資のシェアは減少傾向が続き、2023年1~9月は12.6%まで低下した。特に2019年以降は40億~50億ドル台にとどまり、減少が一層鮮明になっている。
経済部統計処がまとめた近年の対外投資の動向分析によると、2018年の米国の対中追加関税発動以降、台湾企業は顧客の要求に応えるかたちで生産ラインを中国大陸から移転させており、移転先の首位はASEANだという。
台湾の対中投資を業種別にみると、1位は電子部品、2位はPC電子製品および光学製品だが、2018年以降は米国の対中追加関税の影響を最も大きく受けたPC電子製品および光学製品の減少が著しい。2013年~2017年にシェア21.3%だったPC電子製品および光学製品は2018年~2022年には14.0%となった。一方、ASEANへの投資をみると、2013年~2017年に4位以下だったPC電子製品および光学製品のシェアは2018年~2022年には12.2%となり、全体の2位を占めるまでに拡大している。
ASEAN向け以外では、インドへの投資も増加が続いており、2020年以降は3年連続1億ドルを超え、2023年1~9月の金額も既に1億4,780億ドルに達している。近年の業種別の傾向は、2013年~2017年に基本金属業が76.6%で首位を占めていたが、2018年~2022年には1位が化学材料(シェア24.4%)、2位が電子部品産業(同23.3%)となった。
経済部は、近年のサプライチェーン多元化の動きは台湾の経済貿易の実力を高めるとともに、中国大陸に過度に集中するリスクを下げ、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化と経済安全の確保につながるとしている。
(江田真由美)
(台湾)
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