ガリウム・ゲルマニウムの輸出管理強化など輸出管理法運用動向について弁護士に聞く

(中国)

調査部中国北アジア課

2023年10月26日

中国の商務部と税関総署は7月3日、輸出管理法などの規定に基づき、「2023年第23号ガリウムとゲルマニウムの関連品目に対して、輸出管理を実施するとの公告」を公布した(8月1日施行、注1)。

ジェトロは、公告に関する留意点や最近の輸出管理法の運用動向について、北京市環球法律事務所の劉淑珺弁護士と鮑栄振弁護士に聞いた(10月20日)。主な内容は次のとおり。

(問)公告への対応について留意すべき点は。

(答)輸出品目に自社の取引品目が含まれる可能性がある場合、企業はまずそのHSコードを確認し、規制対象かを確定する必要がある。HSコードが不明な場合、または判断がつかない場合は、商務部に問い合わせ、規制対象に該当するか意見を聞くのが望ましい。税関や貿易・通関を専門とする弁護士に問い合わせるのもよい。

また、中国産のガリウム、ゲルマニウム関連品目の輸入が多い日本企業は、差し当たりの対策として、中国側(輸出事業者)と輸出許可証取得について協議することが必要(エンドユーザーの概要や最終用途の説明・誓約書を提出する必要があることから、輸出事業者と輸入する日本企業が連携して取り組むことが不可欠)。また、許可申請が通らなかった場合に備え、中国以外の国からの調達も検討する必要があると思われる。

なお、このたびの規制は、欧米諸国の対中半導体輸出規制に対する対抗措置の1つと推測されることから、中国だけでなく、諸外国の輸出規制の動向についても、注意を払うことが重要と思われる。

(問)輸出管理法による行政処罰の最新動向は。

(答)2022年1月から11月にかけて行政処罰を受けた11件の事例が公表されている(注2)。これらの事例はいずれも「両用品目および技術輸出許可証」を取得すべき品目(イソプロピルアルコール、硫酸バリウムなど)であるにもかかわらず、一般貿易方式で通関申告を行ったことを理由として過料を科されたもの。過料額としては最高額が3万5,000元(約71万7,500円、1元=約20.5円)、最低額が4,700元となっている。11件の内訳は外資系企業4件(日系企業はなし)、中国企業7件だ。

なお、ジェトロは10月20日、調査レポート「中国の安全保障貿易管理に関する制度情報 専門家による政策解説(2023年10月)」を公開した。同レポートの中で「最近の輸出管理法の運用動向(2023年9月時点)」PDFファイル(404KB)と題した解説記事を北京市環球法律事務所の協力を得て掲載している。

(注1)商務部は9月21日の定例記者会見で、同公告の運用動向について「関連規定に適合すると判断した幾つかの輸出申請については、既に認可しており、関連企業に対する『両用品目および技術輸出許可証』の交付も行っている」と公表しているが、本稿執筆時点でそれ以上の詳細は明らかになっていない。

(注2)2021年以前の処罰事例については、ジェトロの調査レポート「輸出管理法に基づく行政処罰事例を踏まえた実務上の留意点(2022年6月)PDFファイル(342KB)」を参照。

(小宮昇平)

(中国)

ビジネス短信 4bd6b4e86473c0f1