米グーグルの反トラスト法違反の訴訟でマイクロソフトCEOが証言

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月05日

マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は10月2日、米国司法省が2020年10月に反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反の疑いでグーグルを訴えた裁判(2020年10月27日記事参照)で、司法省側の証人として証言し、グーグルが独占的な地位を利用して競争を阻害したとの見方を示した。複数の米国メディアが報じた。

2023年9月12日に始まった審理で司法省は、グーグルが、スマートフォンメーカーなどとデバイスの初期設定に同社の検索エンジンを使用するよう契約し、契約を通じて独占的な立場を維持し、消費者が他社の検索エンジンの利用を困難にしていると主張した。これに対しグーグルは、アップルなどとの契約は排他的なものではなく、利用者は初期設定の検索エンジンを他社のサービスに切り替えることができると反論していた。(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版9月12日)。

10月2日の審理では、ナデラ氏が証人として出廷した。同氏は、マイクロソフトのCEOに就任以来、アップルに対してスマートフォーンのデフォルトの検索パートナーをグーグルから切り替えるよう説得しようとして失敗してきたと証言した。同氏によると、マイクロソフトの検索エンジン「ビング」は収益性が高く、過去20年間で約1,000億ドルを投資してきたにもかかわらず、市場シェアはモバイル検索で1桁台、デスクトップ検索ではわずか10%台にとどまる状況だと説明した(CNNビジネス10月2日)。

また同氏は、グーグルが利用者のデータ収集や分析において圧倒的な競争力を持っている現状では、グーグルに対抗することはほぼ不可能だと主張した。同氏は、莫大(ばくだい)な利益と検索市場を独占するグーグルは、人工知能(AI)技術が検索ビジネスを加速させる新たな時代において、独占力をさらに拡大する構えを見せていると警告した(「コンピューターワールド」10月3日)。

2023年に入ってから、マイクロソフトやグーグルは、検索エンジンにAIを組み込む競争を繰り広げている。マイクロソフトが対話型AI「ChatGPT」などを手掛けるオープンAIの最新技術を搭載したビングの最新版を発表したのに対し、グーグルは自社開発した対話型AI「バード」を公開した。

AIによる検索サービスの進化が見込まれる中で、ナデラ氏は「(ビングの最新版を開発したように)AIには新たな切り口があるという私の熱意とは裏腹に、私が陥っているこの悪循環がさらに悪化するのではないかと大いに懸念している」と述べ、AIがグーグルの優位性をさらに強めかねないと警告した(「オブザーバー」10月3日)。

(樫葉さくら)

(米国)

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