インドネシア中銀、現地通貨決済(LCS)制度の概要を解説、ジェトロがセミナー

(インドネシア、日本)

ジャカルタ発

2023年10月03日

ジェトロは9月22日、インドネシア中央銀行(BI)から講師を招き、在インドネシア日本企業を対象に、BIが取り組む現地通貨決済(LCS:Local Currency Settlement)制度の解説セミナーを開催した。LCSは2017年にBIが立ち上げた現地通貨決済を促す取り組みで、利用者には為替リスクや手数料の低減などの利点がある。日本とは2020年8月から開始し、2021年8月には協力枠組みを拡大していた。

セミナーでは、事業者がLCSを活用する具体的なメリットとして、(1)日本で通貨インドネシア・ルピア口座の開設可能、(2)ドルのクロスレートを経ずに日本円とインドネシア・ルピアの直接取引による為替リスク・為替換算手数料の低減(取引の効率性向上)、(3)インドネシア・ルピア建ての金融商品の提供、(4)通貨エクスポージャーの分散といった点が解説された。LCSは指定クロスカレンシー取引仲介者(ACCD:Appointed Cross Currency Dealer)を通して決済業務が行われる。ACCDはそれぞれの国が指名した銀行で、インドネシア側では7行、日本側で5行が指定されている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

BIは2018年にタイとマレーシア、2021年に中国ともLCSの協力枠組みを設立し、2023年9月29日時点で日本を含む4カ国とLCSを実施している。BIによると、今後は韓国、シンガポールとも協力する計画だ。

地元紙「コンタン」(9月5日付)が報じたところによると、LCSの決済総額は2020年に8億ドル、2022年に41億ドルだった。2023年1~7月は37億ドルと順調に増加している。また、2023年上半期の日本とインドネシアの決済額は23%を占め、国別で2位となっている。BIによると、さらに将来はLCSから現地通貨取引(LCT:Local Currency Transaction)に移行し、それぞれの国の通貨を用いて2国間で行う取引を金融勘定、資本勘定などにまで拡大する構想がある。

インドネシア中銀金融市場開発局によると、インドネシアの貿易を通貨別にみると、ドルが輸出の9割超、輸入の8割超を占める。一方、アジアと貿易額が拡大する中、貿易決済などで自国通貨の利用を促進することでドルへの依存を減らし、為替レートの安定を図る狙いがある。また、ドルを経由しないことで企業などの取引コストの効率改善を目指す。

(中沢稔、ティアラ・ダルマシャンティ)

(インドネシア、日本)

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