米ホワイトハウス、薬価引き下げ交渉対象となる10社が交渉参加協定に署名と発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月04日

米国ホワイトハウスは10月3日、製薬会社10社が、10種類の処方箋薬(添付表参照)の薬価引き下げ交渉に参加する旨の協定に署名したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。対象となる処方箋薬は、2022年8月に成立したインフレ削減法(IRA)に基づき選定されていた。薬価に関しては、同じ会社が製造した全く同じ処方箋薬にもかかわらず他国の2~3倍の費用を要するなど、患者に多大な自己負担を強いている事などが問題視されていた(2023年8月31日記事参照)。

製薬会社との交渉に当たるメディケアセンターによれば、交渉は今後、次のように進められる予定だ。

まず秋にかけて、メディケアセンターが当該処方箋薬を服薬している患者も対象とする公聴会や、今回協定に署名した10社から提出された処方箋薬にかかわるデータについての会議を開催し、情報収集を経て具体的な適正価格を検討する。

次に上記を踏まえ、2024年2月1日までにメディケアセンターが各処方箋薬に関して適正だとする価格を企業側に提示する。企業側は、30日以内に提示された価格について受け入れの可否を検討する。提案を受け入れない場合は、同年8月1日までに最大3回にわたり交渉する。このような過程で調整された薬価は2026年1月から適用予定だ。

製薬会社側は、メディケアセンターが提示する価格を受け入れられない場合、交渉から脱退することも可能だが、その場合は(1)処方箋薬の販売に際して課税される、(2)メディケア割引などの適用対象外となり価格競争力を失う、といったデメリットが生じる。このため、今回の交渉参加企業を含む複数の製薬会社(注)から、薬価引き下げ交渉は事実上の財産権の侵害に当たり、米国憲法修正第5条に違反するとして訴訟が起こされている。企業側の対応や訴訟の結果を含め、薬価が予定どおり引き下げられるのか引き続き注目だ。

(注)今回交渉に参加した中では、メルク・シャープ&ドームが2023年6月に、ブリストル・マイヤーズ・スクイブが同7月に、アストラゼネカ、ベーリンガー・インゲルハイムが同8月にそれぞれ訴訟を起こしている(バイオスペース9月5日)。

(加藤翔一)

(米国)

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