米保健福祉省、薬価引き下げ交渉の対象となる処方箋医薬品10種を選定

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月31日

米国保健福祉省は8月29日、2022年8月に成立したインフレ削減法に基づき、薬価引き下げ交渉の対象となる処方箋医薬品10種類を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。インフレ削減法では、処方箋医薬品に対する被保険者のアクセスを改善するため、65 才以上の高齢者と65 才未満の障害者向けの公的医療保険プログラム「メディケア」に対し、製薬会社と直接価格交渉できる権限を与えている。これに基づき、メディケアの運営主体の保健福祉省のメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は今後、患者に焦点を当てた公聴会の開催や、今回交渉の対象となる薬剤、それらの代替となる治療法、満たされていない医療ニーズなどに関する情報募集などの準備を行った上で、製薬会社との交渉を2023年内に開始する。交渉結果は2024年9月1日までに公表され、2026年から薬価に反映される予定だ。

CMSが発表したファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、対象となる薬品はいずれも糖尿病や心血管疾患、心不全、慢性腎臓病などの重篤な症状の治療に必要となる薬剤。保健福祉省によると、これらは2022年6月から2023年5月までのメディケアによる処方対象の医薬品総額の20%を占めており、患者にも多大な自己負担を強いていることから、早急な改善が望まれていた。また、今回の交渉対象となった処方箋医薬品はあくまで第1弾で、2027年、2028年にそれぞれ最大15種類、その後は最大20種類の医薬品を毎年追加していく予定だ。

今回の交渉について、ジョー・バイデン大統領も29日に記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開き、これまでは同じ会社が製造した全く同じ処方箋医薬品にもかかわらず、他国の2~3倍の費用がかかっていたと指摘するとともに、薬価交渉の結果は国民の懐に還元されるだけでなく、連邦政府の財政赤字を今後10年間で1,600億ドル節約できるだろうと述べ、その意義を強調した。

(加藤翔一)

(米国)

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