UAWのストライキは日系自動車関連企業3割強に影響、ジェトロの影響度調査

(米国)

シカゴ発

2023年10月27日

ジェトロは、米国自動車労働組合(UAW)のストライキによる米国進出自動車関連日系企業への影響度アンケート調査を実施した。本調査は、過去に米国でジェトロの自動車関連事業に参加した企業や、地元日系商工会に加盟する自動車関連企業などを対象に、10月17~25日に実施したもので、合計134社から回答があった。

調査結果によると、全回答企業の3割強がストライキによる影響がある(「大いにある」8%、もしくは「ややある」26%)と回答した(添付資料図1参照)。他方、6割以上の企業にとって影響は限定的(「あまりない」46%、もしくは「全くない」15%)であることが分かった。

何らかの影響があると回答した企業のうち、「悪い影響」があると答えた企業は9割以上に及んだ(添付資料図2参照)。悪い影響の具体的コメントとしては、「デトロイト3への部品供給が滞り、売り上げが減少している」が最多だった。中には、「売り上げのほぼ全てが、最終的にデトロイト3のピックアップトラックやスポーツ用多目的車(SUV)のパワートレイン内の部品に依存している。米国向けは売り上げ半減、メキシコ向けも減少していくと思われる」という深刻な状況も明らかになった。「デトロイト3のサプライヤー向けに予定していたプロジェクトがペンディングになった」といった先行きの不透明感を浮き彫りにするコメントも見られた。「良い影響」があるとした企業からは、「日系Tier1、米系Tier1ともに内示数アップ、実流動数もアップになっている」とする一方、「11月以降、反動があるのか不安」との懸念も示された。「どちらの影響もある」とした企業は、「デトロイト3への販売減とデトロイト3の新車種の生産立ち上がり遅れがマイナス要因」だが、「日系OEM(完成車メーカー)の生産は順調のため、人員不足などもあって生産に追われており、デトロイト3による減産がプラス要因でもある」とのコメントがあった。

今後ストライキが一層長期化した場合の影響については、「供給停止するサプライヤーが複数発生することにより、連鎖的にOEMの稼働停止が予想される。それが市場の車両在庫の枯渇を招き、最終的に経済・産業界全体への影響が見込まれる」といったマクロ経済にマイナスの影響を与えるという見方が複数寄せられたほか、「米系自動車の新車在庫が枯渇し、日系メーカーの在庫と操業にも影響を及ぼし、日本からの部品関係の緊急出荷の頻度が増える」「モノの滞留により新型コロナ禍のようなサプライチェーン混乱や輸送混乱が出てくるのではないかと想定している」といった懸念も示された。他方、「従業員の一時解雇などの対応も必要となる」「長期的にみると賃金の上昇によって、他のメーカーへの賃金上昇圧力が上がり、人不足で年末年始に向けて生産性が落ちるのではないか」「賃上げなど、UAWの要求事項がどこで決着するかの影響が長期的に大きいと感じる」といった、労働環境への影響を心配するコメントも複数見られた。

(西澤知史)

(米国)

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