バイデン米大統領がアジア訪問を終了、メディアや識者は中国への対抗が主との評価

(米国、インド、ベトナム、中国)

ニューヨーク発

2023年09月12日

米国のジョー・バイデン大統領は9月11日、インドとベトナムへの訪問を終え米国に帰国した。インドではG20首脳会議に出席し、ベトナムでは2国間関係の強化で合意した。ベトナム訪問中の10日に行われた記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでバイデン大統領は、今回の訪問は中国を囲い込むためではないとしたが、メディアや識者は中国への対抗が主眼だったと評している。

インドではG20首脳会議への出席に先立ち、2023年6月以来となるナレンドラ・モディ首相との対面会談を行った(2023年6月23日記事参照)。今回のインドとの共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、おおむね6月の会談で合意された事項をフォローする内容となっており、引き続き重要・新興技術分野を筆頭に多分野にわたる両国間の協力を深化させるとしている。また両国はこの機会に、WTOで長年係争中となっていたインドによる米国産鶏肉の輸入制限措置にかかる紛争の終結で合意した。さらにインドは、米国からの一部農産品に対する関税を引き下げる。キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表は「(WTOで米印が争っていた)この最後の紛争を解決できたことは、米印通商関係における重要なマイルストーンだ」と評価した。G20首脳会議には中国とロシアから首脳が出席しなかった点が注目された。「ウォールストリート・ジャーナル」紙(電子版9月8日)はこの点を指摘した上で、米印両国は中国に対抗するために関係強化を追求したと論評している。このほか、インドで起きた注目すべき点として「ワシントン・ポスト」紙(電子版9月11日)は、米国と複数の国・地域(注)による「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」にかかる覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを挙げている。これは、関連地域の鉄道・港湾網や、送電・通信ケーブル、水素輸送用パイプラインの拡充などを通じて、地域の連結性と経済統合を促進する構想だ。CNN(9月10日)も、これは中国が推進する一帯一路構想に対抗するものだとして、大統領訪印の成果の1つと指摘している。

バイデン大統領はその後、ベトナムを訪問し、共産党のグエン・フー・チョン書記長と会談し、両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げした。これはベトナムにとって外交上、最上位の2国間関係となり、米国のほかでは中国やロシア、インド、韓国が該当する。今回の動きについて、米国戦略国際問題研究所(CSIS)のグレッグ・ポーリング東南アジア部長は、ベトナムが中国を戦略的脅威と見ていることが後押しとなったと分析している(ボイス・オブ・アメリカ9月5日)。「ニューヨーク・タイムズ」紙(電子版9月10日)は、バイデン大統領はベトナムとの間で、両国の過去を乗り越え、中国に対する共通の懸念に対応するために新たな戦略的関係を固めた、と評価している。ホワイトハウスのファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、両国は今後、半導体分野を筆頭に協力関係を深めていくとしている。

(注)覚書の締結国・地域は、米国、サウジアラビア、EU、インド、アラブ首長国連邦、フランス、ドイツ、イタリア。

(磯部真一)

(米国、インド、ベトナム、中国)

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