ALPS処理水放出後、日本産水産品売り上げへの影響は限定的

(台湾)

調査部中国北アジア課

2023年09月29日

台湾では、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水放出について、輸入規制の強化は行っておらず、関連省庁が連携して立ち上げたウェブサイト「放射性物質海域拡散海洋情報プラットフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」において、海水モニタリングの結果を発表し、消費者に安心するよう呼びかけている(2023年9月4日記事参照)。

現地の日本食品・水産品を取り扱う卸売業者、小売店を対象にジェトロが9月6〜27日に行ったヒアリングによると、現時点では影響は限定的で、放出開始からの時間の経過とともにALPS処理水のニュースを気にする消費者が減りつつあるようだ。

百貨店内のスーパーマーケットに日本産水産品を卸している輸入・卸売業者によれば、「ブリ、タイなどの魚種の売り上げに減少が見られる」とのことだった。一方で、引き続き日本産水産品を購入する消費者もおり、そのような消費者の場合、「海洋の汚染物質はほかにもたくさんあるので、ALPS処理水だけを気にしても仕方ない」というスタンスで、何よりも日本産水産品のおいしさ、新鮮さを高く評価しているという。日本のホタテやアナゴ、イクラを中心に取り扱っている別の輸入・卸売業者によれば、「売り上げに大きな影響は出ていない」とのことだ。

日本の加工食品や一部水産品も扱う日系の小売店の場合、「売り上げには全く影響がでていない」とのことだった。

台湾地場系の百貨店によれば、「マグロ、サンマ、サバの3魚種に売り上げの減少がみられるが、大幅な減少ではない」という。また、「ホタテの売り上げには影響が出ておらず日本産加工食品に関しても影響はない」とのこと。百貨店の責任者は「台湾では現在、処理水よりも総統選の方に関心が高く、メディアでの報道も総統選関連ニュースの方が多いため、今は水産品の安全を気にしている消費者も2、3カ月たてば従来どおりの購買行動に戻るとみている。台湾当局の海水サンプル検査の結果を見ても、トリチウムの量はゼロに近い値であり、日本の食品もこれまで同様に取り扱っていく」とコメントした。

(江田真由美)

(台湾)

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