ルーラ大統領、気候変動・飢餓対策を次期G20優先議題と宣言、各国との首脳外交にも注力

(ブラジル、G20、インド、トルコ、EU、フランス、サウジアラビア、オランダ、エジプト、メルコスール)

調査部米州課

2023年09月15日

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は9月9~10日にインドのニューデリーで開催されたG20サミットに参加した。同サミットでルーラ大統領は、自国が議長国を務める次期G20サミットの優先事項として、「飢餓、貧困、不平等との闘い」「エネルギー転換の取り組みと経済・社会・環境での持続可能な開発」「グローバルガバナンスの強化」を掲げることを宣言した。また、ブラジルがG20議長国の任期中(注)に「飢餓と貧困に対する世界同盟(Aliança Global contra a Fome e a Pobreza)」と「気候変動に対する世界動員(Mobilização Global contra a Mudança do Clima)」と題した2つのタスクフォースを立ち上げる意向を発表した。ルーラ大統領は、飢餓や気候変動に対する取り組みを世界全体で加速させ、特に先進国にはスピード感を伴った行動を要求すると強調した。

EU・メルコスールFTA早期妥結に向けた働きかけに注力

ルーラ大統領は同サミットの会期中に、議長国のインドに加え、トルコやEU、フランス、サウジアラビア、オランダ、エジプトの計7カ国・地域と個別に首脳会談を実施した。各国・地域との首脳会談の概要は添付資料表を参照。

中でもルーラ大統領は、9月10日に行われたフランスのエマニュエル・マクロン大統領との首脳会談や、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長との会合を重ねた。会談では2019年の政治合意から署名が滞っているEU・メルコスール自由貿易協定(FTA)について働きかけを行ったことをアピールした。ルーラ大統領は「メルコスールは最速でFTAを締結する準備はできており、欧州側の明確な姿勢を望んでいる」として、FTA早期締結に向け意欲を見せた。一方で「EUが作成した環境分野に関するサイドレターをメルコスールは受け入れない」とくぎを刺した。これ対して、フォン・デア・ライエン委員長は9月10日、自身の公式X(旧ツイッター)で「EUはブラジルとのパートナーシップを重視しており、EUとメルコスールが前進する道を見つける必要がある」と述べた。

9月9日付の「メルコ・プレス」紙によると、EU側は同サイドレターに対するメルコスール側の対案を待っているが、ブラジルとウルグアイの意見の相違や、パラグアイ大統領の交代などの影響で、メルコスール共同による回答が遅れたと指摘している。しかし、ブラジルのマウロ・ビエイラ外相は「既に環境分野に関するサイドレターに対するメルコスールの立場を表明した書面をEUに提出した」とも述べており、「メルコスールは環境分野に盛り込まれた制裁について、EUがより柔軟になることを望んでいる」と発言した。

一方で、ウルグアイとパラグアイの外交筋によると、両国はまだEUに対して書面で立場を表明しておらず、欧州議会のトーマス・ワイツ議員も「そのような書面は受け取っていない」と、ブラジルメディアへの取材で明らかにしている(「メルコ・プレス」紙9月9日)。

(注)ブラジルは2023年12月1日から2024年11月30日の間、G20の議長国を務める。

(小西健友)

(ブラジル、G20、インド、トルコ、EU、フランス、サウジアラビア、オランダ、エジプト、メルコスール)

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