IEA、2050年までのネットゼロに向けたロードマップの最新版を公表

(世界)

調査部国際経済課

2023年09月29日

国際エネルギー機関(IEA)は9月26日、「Net Zero Roadmap(2023年更新版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。本報告書は、IEAが2021年5月に発表した、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出をネットゼロにするためのロードマップである「Net Zero by 2050」(2021年5月26日記事参照)に、2021年以降の主要な進捗を加えたものだ(添付資料表参照)。

IEAによると、2022年の世界のCO2排出量は369億トンと過去最高になった。新型コロナのパンデミック前の水準よりも1%増えたが、クリーンエネルギー技術の普及加速により、化石燃料の需要はこの10年間のうちにピークを迎えると見込む。

クリーンエネルギー技術の進展については、太陽光発電の導入容量および電気自動車の販売台数が2021年に策定したロードマップに沿って堅調に伸びていると評した。クリーンエネルギー関連技術の生産能力は急速に増加しており、2022年は蓄電池が前年比72%増、太陽光パネルは39%増、電解槽は26%増を記録した。IEAは太陽光発電と蓄電池について、現時点で発表されているすべてのプロジェクトが履行された場合、2030年の中間目標をほぼ達成するとした。

クリーンエネルギー技術の発展を評価する一方、2050年のネットゼロ達成のためには、2030年時点でCO2排出量を240億トンまで削減する必要がある。目標達成のカギとなるのは再エネ設備容量の増加だ。2022年の世界の再エネ設備容量は3,629ギガワット(GW)だが、2030年には約3倍の1万1,008GWへ拡大することが必要になる。また、化石燃料の需要削減のためにも、CO2削減対策を行わない石炭発電所の新規承認の即時停止、油田やガス田の新規開発の不要をあらためて強調した。また、クリーンエネルギー技術に対する投資は、2030年までに年間4兆5,000億ドル必要とし、2023年の1兆8,000億ドルから約2.6倍の増加が必要と指摘した。

IEAは報告書において、当初のロードマップ「Net Zero by 2050」を策定した2021年以降の主な情勢の変化として、パンデミック後の経済活動の回復、エネルギー効率化政策の実施の遅れを背景に、2030年時点のCO2排出量やエネルギー最終消費量が増えた点を挙げ、「2050年までのネットゼロ達成への道筋は、当初のロードマップよりも険しい」と警鐘を鳴らす。ただし、クリーンエネルギー技術の向上により道は開かれているとし、各国・地域による取り組み加速の必要性を示した。

(田中麻理)

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