米ミシガン州セミナーで投資拡大呼びかけ、ウィトマー知事は日系企業への支援強調

(米国、日本)

調査部米州課

2023年09月08日

ジェトロは9月7日、米国ミシガン州のビジネス・投資環境を紹介するセミナーを東京で開催した(注1)。ラーム・エマニュエル駐日米国大使、ミシガン州のグレチェン・ウィトマー知事、ジェトロの石黒憲彦理事長が登壇したほか、米国でのビジネス展開に関心を持つ製造業を中心とした日本企業などから約80人が参加した。

開会あいさつで石黒理事長は、これまで長きにわたって多くの自動車関連の日本企業が同州に進出し、ビジネスを拡大してきたとして、日本との関係の強さを説明した。同州が強みを持つ自動車産業については、電気自動車(EV)や自動運転など技術的変革期にあるほか、サプライチェーン強靭(きょうじん)化が試される状況にあるとして、日米企業間の連携の重要性が増していると述べた。また、日本企業の米国進出では、州政府や経済開発公社と連携が重要だと説明した(注2)。

写真 ジェトロの石黒理事長(ジェトロ撮影)

ジェトロの石黒理事長(ジェトロ撮影)

エマニュエル大使は、自動車産業だけでなく、特に半導体分野で同州に大きな可能性があると指摘した。具体的には、世界の地表淡水の約20%を占める五大湖を引き合いに、真水など資源の豊富さや、優秀な人材、インフラなどが備わっているとして、半導体・ライフサイエンス・物流・ロボット工学、先端製造業などさまざまな分野で「ミシガン州は未来をかたち作る最前線にある」と述べた。

写真 エマニュエル大使(ジェトロ撮影)

エマニュエル大使(ジェトロ撮影)

基調講演を行ったウィトマー知事は「ミシガン州が日本企業の北米市場への玄関口になっている」と述べ、優秀な人材の豊富さや、物流インフラの充実、米国・カナダの人口集積地への近接性など、ビジネス・投資環境の優位性をその理由に挙げた。実際に、同州内に日系企業が456の拠点を設置し、4万人近い雇用を創出していると紹介しつつ、「日本はミシガン州にとって重要な投資国であり続けている」「日本企業を支援する努力を続けていく」「必要であれば、富士山ほどの山でも動かすのがわれわれの哲学だ」と述べ、日本企業への支援を約束した。

写真 ミシガン州のウィトマー知事(ジェトロ撮影)

ミシガン州のウィトマー知事(ジェトロ撮影)

ミシガン州経済開発公社(MEDC)のクイントン・メッサー代表は、一定規模の新規雇用者数や投資金額に応じた助成金のほか、人材採用支援、工場設立の際のインフラ整備支援、法人税や固定資産税の減免措置などを紹介し(注3)、「あらゆる産業の、大企業のみならず中小企業にも平等に適用される」と強調した。

投資の決め手は優秀な人材や地域社会との関係

セミナーでは、同州でビジネスを展開する日系企業によるパネルディスカッションも行われた。トヨタ・モーター・ノース・アメリカのカレン・ジョンストン州政府渉外担当ディレクターは、同州の研究開発拠点の拡張(2023年6月12日記事参照)を決定した理由について、「人材、インフラ、ミシガン大学などの素晴らしいエコシステムがあり、イノベーションを継続することができると考えたから」と述べた。日産自動車の秋月勇人法規・認証部法規・技術渉外グループ部長は、同州に進出したきっかけや追加投資を続ける理由について、「優秀な人材が豊富にいることや、35年にわたる投資で地域社会や従業員との信頼関係が築けていること、さまざまな方面で州政府の支援が充実していることだ」と述べた。

(注1)ミシガン州は米国中西部の五大湖沿いに位置する。州人口は1,003万人(2022年7月推計)。州都はランシング、主要都市デトロイトは米国自動車大手のフォード、ゼネラルモーターズ(GM)が周辺に本社を構えるなど、自動車産業の世界的集積地を形成している。

(注2)米国は各州政府も独自に外資誘致インセンティブを有する場合が多い。ジェトロは、米国への進出や拠点拡大時、州政府などと連携した工場設立や研究開発拠点の設立の立地選定支援サービスを提供しているほか、ミシガン州を含む各州政府から日本企業向けのブリーフィング動画を公開している。

(注3)詳細はMEDCのWEBサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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