世界経済自由度、報告書公表以降、香港が初めて1位から2位に

(香港)

香港発

2023年09月28日

カナダのバンクーバーに拠点を置くシンクタンクのフレーザー・インスティテュート(フレーザー)は9月19日、「世界経済自由度 年次報告書2023年版」を発表した。同年次報告では、2021年の経済状況に基づく「世界経済自由度ランキング」(注)を公表しており、香港特別行政区は前年(8.59点)から順位を下げて、2位(8.55点)だった。1位は前年2位だったシンガポール(8.56点)で、香港との差はわずか0.01ポイントだった。1996年に同報告書が公表されて以来、香港は首位をキープしてきたが、今回初めて2位となった。

評価項目は「政府の規模」「法制度と財産権」「通貨の健全性」「国際貿易の自由度」「規制」の5分野で構成される。このうち、香港は「国際貿易の自由度」(9.04ポイント)で国・地域別1位だった。

フレーザーは「中国政府による新たな参入障壁、外国人労働者の雇用制限、事業コストの上昇が『規制』のポイントを下げたほか、軍による法治への干渉の高まりや、司法の独立性と裁判所の公平性に対する信頼の低下が『法制度と財産権』のポイントを下げた」と指摘している。加えて、フレーザーは、香港の評価がここ2年間で0.40ポイントも下落した点に懸念を示し、「中国政府による経済的・政治的な取り締まりと、新型コロナウイルス感染拡大がどの程度、評価結果に影響しているのかを見極めるのは困難」としつつも、「ここ数年の香港の評価点落ち込みは、世界平均の落ち込みをはるかに上回っている」と指摘した。

香港政府の報道官は同日、同報告書による香港の評価見解に関し、「香港は『一国二制度』『香港人による香港の統治』、高度自治の原則を完全かつ忠実かつ断固として実施してきた」と強調したほか、「香港は長期的な繁栄と安定を維持しており、既に安定から繁栄へ進む新段階に入った」とコメントした。

日本は8ランク低下し20位に

同報告書1位のシンガポールは前年から0.08ポイント上昇の8.56ポイントだった。3位はスイス、4位はニュージーランド、5位は米国だった。日本は前年から0.03ポイント低下の7.79点で、前年(12位)から大きく低下し、20位だった。

(注)世界165カ国・地域を調査対象とし、全5項目についてそれぞれ10点満点で評価。合計点(50満点)と項目数(5項目)から割り出した平均値を指数として、指数が高い順に調査対象の国・地域を順位付けしたもの。1996年から毎年発表している。2023年版の年次報告では、2021年が包括的なデータが利用可能な最新の年として、同年のランキングを公表している。同年次報告書はフレーザー・インスティテュートのウェブサイトから確認できる。

(松浦広子)

(香港)

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