欧州委、2023年のEUのGDP成長率予測を下方修正、夏以降は経済活動が鈍化

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2023年09月15日

欧州委員会は911日、夏季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(中間予測、注)を発表した。EU27カ国とユーロ圏20カ国の2023年の実質GDP成長率をともに0.8%と予測し、前回5月の春季経済予測(2023年5月22日記事参照)からそれぞれ0.2ポイント、0.3ポイント下方修正した。2024年の成長率予測も、EU1.4%(前回予測1.7%)、ユーロ圏は1.3%(同1.6%)と、ともに0.3ポイント下方修正した(添付資料表1参照)。

欧州委は、消費の低迷などによって2023年上半期の経済活動は伸び悩み、夏以降も経済活動は鈍化する見込みとした。エネルギー価格の下落や、記録的な低失業率、雇用の継続的な拡大、賃金の上昇といった好労働市場にもかかわらず、商品やサービスに対する価格が高止まりし、前回予測よりも深刻な影響を消費活動に与えているという。経済成長の鈍化は2024年まで続き、金融引き締め政策は経済活動を抑制する懸念がある。翌年以降はインフレ率が緩和され、労働市場は堅調に推移し、実質所得が徐々に回復し、穏やかな成長回復が見込まれる。

ユーロ圏主要国の2023年の成長率については、スペインは2.2%、フランスは1.0%、イタリアは0.9%と見通される中で、ドイツのみがマイナス0.4%とマイナス成長の見通しとなった。

国際的金融引き締めが新たなリスク要因として浮上

2023年のインフレ率(消費者物価指数上昇率)はEU6.5%(前回予測6.7%)、ユーロ圏で5.6%(同5.8%)と、いずれも前回予測から0.2ポイント低い予測となった(添付資料表2参照)。エネルギー価格は2023年末までに穏やかに下落するが、2024年には原油価格の上昇に伴い、再びわずかに上昇する見込み。サービス業のインフレは、予測以上に高止まりしているものの、金融引き締めと新型コロナウイルス感染拡大後の一時的な経済回復効果が薄れるにつれ、需要が縮小し、落ち着く見込み。

欧州委はリスク要因として、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済的混乱や、国際的な金融引き締めに言及し、今回のEUの経済成長とインフレ率予測に対しての上振れ、下振れリスクの両方となる可能性があるとした。パオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)は「インフレ率は低下しているが、その速度は域内でばらつきがある」と指摘した。

(注)欧州委は春と秋にGDPの各構成要素や失業率、財政収支のGDP比などを含む包括的な経済予測を発表し、夏と冬に実質GDP成長率と消費者物価指数上昇率に関する中間予測を発表する。今回の経済予測では、EUとユーロ圏のほか、EU加盟国別の予測は、経済規模が最も大きい6カ国(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、オランダ、ポーランド)のみを取り上げている。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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