ケニアの2023年度財政法にかかる増税で日系企業にも混乱

(ケニア、日本)

ナイロビ発

2023年09月11日

ケニアで広範な税制見直しが行われた2023年度財政法(Finance Act 2023)について、9月以降、本格的な施行が始まり、日系企業も対応に迫られている。同法は政府が深刻な財政難を背景として、各種税率の引き上げや税源の拡大による税収増を目指したもので、新会計年度の始まる7月1日の施行を目指し、政府内で調整が続けられてきた。

しかし、高インフレで困窮する国民の反発を招き、反対デモの頻発や裁判所への提訴、差し止めにより施行が遅れていた。裁判所は7月28日に施行を承認したものの、広範な税制の見直しや頻繁な変更、電子納付システム(iTAX)の更新が追いつかないなどの混乱があった。日系企業の間でも懸念の声が上がっていたが、現在、各社は徐々に対応を進めつつある。

個人所得税の引き上げや住宅賦課金の導入などの人件費上昇や、ガソリン価格引き上げによる運営コスト増、環境保護や国内産業保護を目的とした新たな物品税や賦課金の導入により、各社のビジネスにも大きな影響が出ている。ケニアの主要産業の花卉(かき)業界では、人件費の上昇により人員削減に動く企業も出てきているという。

2023年度財政法にかかる大きな変更点は以下のとおり(詳細は添付資料参照)。ただし、ほかにも多くの税制の見直しがあったため、専門の弁護士、会計士に詳細を確認の上で対応することが望まれる。個人所得税や住宅賦課金(2023年9月7日記事参照)など、7月1日に施行されたがiTAXが8月2日付で新税率に更新されたため、納付が難しかったものについては、不足分を追加納税することが必要となる。また、それぞれ施行日が7月1日にさかのぼるものや、9月1日からのもの、2024年1月1日からのものがあるので、注意を要する。

  • 源泉徴収税の支払い期限の変更:「翌月20日まで」から「5営業日以内」に変更。
  • 個人所得税(PAYE)の引き上げ:新たに32.5%と35%の2つの税率を追加。
  • 住宅賦課金(Affordable Housing Levy; AHL)の新規導入:総所得の1.5%ずつを雇用者、被雇用者がそれぞれ支出し、政府が進める住宅整備の基金として負担。
  • 法人税の引き下げ:支店などの恒久的施設を通じてケニアで事業を営む税法上の非居住者企業について、税率を従前の37.5%から居住者企業と同じ30%に引き下げ。
  • 石油製品にかかる付加価値税(VAT)の引き上げ(8→16%)、携帯電話や電気自動車の国内生産奨励にかかるVATの0%化。
  • 環境保護のためのプラスチック製品などの輸入にかかる物品税引き上げや、外貨節約、国内生産奨励のための魚や砂糖、セメント、家具などにかかる物品税の新規導入。
  • デジタル通貨などのデジタル資産の取引やデジタルコンテンツ事業者にかかる新たな課税。
  • 国内生産奨励、雇用創出などを目的としたセメント、鉄鋼、紙製品にかかる輸出・投資促進賦課金の新規導入。

(佐藤丈治)

(ケニア、日本)

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