英政府、内燃車販売禁止を2035年まで延期、2050年ネットゼロ達成目標は維持

(英国)

ロンドン発

2023年09月22日

英国のリシ・スナク首相は9月20日、同国のネットゼロ政策に関する記者会見を実施外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2050年のネットゼロ達成に向けた計画の見直しを発表した。主な見直し内容は次のとおり。

  • ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止するとしていた方針(2020年11月20日記事参照)について、期限を2035年まで延期。
  • 2026年から段階的に導入することとしていた石油・ガスボイラーの新規設置禁止を後ろ倒し、2035年まで延期。
  • 大家に対する物件のエネルギー効率性向上を義務付ける政策案を撤回。

背景としては、電気自動車(EV)への買い替えや、ヒートポンプなどのクリーン暖房への転換には多額のコストを要し、インフレにより家計が圧迫される状況下で現状の目標が現実的ではないと判断したためとしている。一方で、2050年にネットゼロを達成するという目標は維持するとし、目標の達成に向けて「新たなアプローチ」で取り組んでいくとした。今後、財務省とエネルギー安全保障・ネットゼロ省により、包括的な改革策が発表されるとしている。

今回の発表に対し、エネルギー企業の業界団体「エナジーUK」のエマ・ピンチベック最高責任者は「政策の突然の変更は必要な投資に損害を与え、雇用や成長といった経済的利益と機会を危険にさらす」として懸念を示した。また、英国自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は「新車市場のゼロエミッション化に対する自動車業界のコミットメントは変わらない」と説明した。

ネットゼロに向けた各対策は継続

家庭用のクリーン暖房導入に向けては、住宅のエネルギー効率向上に向けた断熱材導入のために、総額10億ポンド(約1,810億円、1ポンド=約181円)の資金提供を発表している。また、今回の方針発表では、ヒートポンプ暖房への買い替え支援策の「ボイラーアップグレードスキーム」について、当初から5割増しの最大7,500ポンドを提供することを明らかにした。

このほか、ネットゼロ政策関連として、陸上風力の審査プロセス合理化、水素のガス混焼導入に関する意見公募、政府による資金提供が決定しているサイズウェルC原子力発電所の民間投資公募を発表している。加えて、洋上風力をはじめとする再生可能エネルギーの送配電ネットワークへの接続の迅速化方針も打ち出している。

(菅野真)

(英国)

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