ムンバイでフィンテックの国際イベント開催

(インド)

ムンバイ発

2023年09月19日

インド西部ムンバイで、9月5~7日の3日間にわたり、グローバル・フィンテック・フェス2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが開催された。世界100カ国以上からフィンテック企業、銀行、クレジットカード企業、決済システム企業、規制当局などの代表者が一堂に会し、講演会やパネルディスカッション、ピッチイベント、展示会などが行われ、来場者は6万5,000人にのぼった。

日本からは、一般社団法人Fintech協会代表理事副会長の鬼頭武嗣氏が、「フィンテックハブの設立に向けたロードマップ」についてのパネルディスカッションに登壇。同氏は「日本のフィンテック業界の課題は、才能ある人材の確保、資金調達、国際化であり、さらなる発展にはインドを含む海外の企業や人材とのコラボレーションが重要になっていく」と述べた。また、ジェトロの取材に対して、「インドには、クロスボーダー決済やDFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)(注)の面での連携、またフィンテックに欠かせない半導体などハードウエアの製造拠点として期待したい。巨大市場としても魅力的ではあるが、豊富な人材を基盤とする競合が多い」と語った。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

そのほか、会場内では、日立ペイメントサービスとインド決済公社(NPCI)によって新たに開発された「Hitachi Money Spot UPI ATM」が初披露された(2023年9月15日記事参照)。このATMは、インド政府主導の統合決済インターフェースUPIを活用しており、スマホ上の電子決済アプリを使うことで、キャッシュカードを使うことなく現金を引き出すことが可能だ。現在はNPCIが開発した電子決済アプリBHIM(ビーム)を介してのみ利用可能だが、今後PhonePe(フォンペ)、Google pay(グーグルペイ)、Paytm(ペイティーエム)といった他のアプリからも利用可能となる。これにより、セキュリティー強化、利便性向上、そして銀行ATMやデビットカードが普及していない地域での金融包摂促進が期待される。

写真 会場で初披露された「Hitachi Money Spot UPI ATM」(ジェトロ撮影)

会場で初披露された「Hitachi Money Spot UPI ATM」(ジェトロ撮影)

インドのフィンテック市場は急拡大している。今回のイベントで、インド準備銀行(RBI、中央銀行)のシャクティカンタ・ダス総裁は、「インドのフィンテック業界は2030年までに年間約2,000億ドルの収益を挙げることが予測されており、世界のフィンテック業界の総収益の13%を占める可能性がある」と述べた。また、UPIを基盤とした電子決済市場に広がりが見られ、即時決済については2022年の世界全体取引の46%をインドが占めているという(「ミント」紙9月6日)。

(注)DFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとは、「プライバシーやセキュリティー、知的財産権に関する信頼を確保しながら、ビジネスや社会課題の解決に有益なデータが国境を意識することなく自由に行き来する、国際的に自由なデータ流通の促進を目指す」というコンセプト。

(丸山春花)

(インド)

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