8月の物価上昇率が過去32年間で最高値に

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年09月26日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は9月13日、8月の消費者物価指数(CPI)上昇率が全国平均値で前月比12.4%増だったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。CPI上昇率が単月で2桁に達するのは2002年4月の10.4%以来で、過去32年間で最も高い上昇率となった。前年同月比(年率)では2.2倍と、7カ月連続で100%を超えた(添付資料図参照)。1~8月累計の物価上昇率は80.2%に達した。

前月比の伸び率を8月単月でみると、季節によって価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは10.7%増、エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは8.3%増で大幅に加速した。季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は前月比13.8%増を記録した。

前月比の伸び率を費目別にみると、上昇率が高かったのは食品・飲料(酒類を除く)の15.6%増、医療・健康の15.3%増、家財道具・住宅管理の14.1%増で、平均値を上回った。外食・ホテルも12.4%増と高く、年率では2.4倍と最も大きく伸びた費目となった(添付資料表1)。CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)の中では、牛肉が前月比約30%増、鶏肉や魚類が約20%増と大きく伸びた。

ジェトロが9月18日にブエノスアイレス市内で独自に行った価格調査(添付資料表2参照)でも、牛肉、鶏肉の大幅な物価上昇が確認された。政府がガソリンや軽油の値上げを承認したことから、これらも前月比12.5%増と大幅に上昇した。ほかにも、伸び率が2桁になった品目が多数見られた。

8月の大幅な物価上昇は7月下旬の通貨ペソ下落や、8月13日の大統領予備選挙の予想外の結果を受けた為替市場の混乱(2023年8月15日記事参照)が影響した。多くのエコノミストらは9月も8月と同様の水準の物価の伸びを予測している。

セルヒオ・マッサ経済相は労働者の所得改善に向けたさまざまな措置を打ち出している。月給が40万ペソ(約16万8,000円、1ペソ=約0.42円)までの官民の正規雇用労働者向けに6万ペソの特別ボーナスの支給を義務付けたほか、月給が177万ペソ以下の労働者の所得税を免除、約71万ペソまでの給与の労働者に食品や生活必需品の付加価値税(IVA税)を還付するなどの措置を発表した。これらの措置がさらに物価上昇を引き起こす可能性があることから、ハイパーインフレの直前まで来ていると懸念するエコノミストの声も聞かれる。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

ビジネス短信 8e11aa53036552ff