アルゼンチン大統領予備選、選挙翌日の金融政策変更で為替市場は混乱

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年08月15日

8月13日に行われたアルゼンチン大統領予備選挙(PASO)では、事前予想に反して大統領候補のミレイ氏と同氏が率いる右派政党「自由前進」(LLA)が躍進した。LLAはマーケットフレンドリーな政策を掲げる一方、通貨交換の自由あるいはドル化(米ドルの法定通貨化)や中央銀行の廃止など、実現可能性が疑問視される提案も含まれており、同国の政治経済先行きに不透明感が増した。その結果、選挙翌日にはニューヨーク債券市場の時間外取引(プレ・マーケット)において、アルゼンチン関連の債券価格が軒並み下落した。

これを受けて、アルゼンチン中央銀行は選挙翌日の8月14日、政策金利を21ポイント引き上げて118%にするとともに、公定為替レートの大幅な下落を容認。8月14日のインターバンクレートの終値は1ドル=349.96ペソと、8月11日から21.8%下落した。これに連動するかたちで、8月14日の並行為替レート(ブルーレート)は、8月11日の終値1ドル=605ペソから一気に80ペソ下落し、一時、過去最安値の1ドル=690ペソを記録した(現地紙「アンビト」電子版)。

もっとも、政策金利の引き上げと通貨切り下げの加速といった今回の中銀による金融政策は、IMFと合意した経済プログラムに従って行われているものだ。元来意図していたのは、ペソの需要を高めることで公式為替レートとブルーレートの乖離幅を縮小させることだが、予想外の選挙結果を受けて、ブルーレートも大幅に切り下がり、為替レートの乖離幅は広がったままになっている。今回の措置には、約75億ドルのIMFによる融資の払い込みを確実なものにしたいという政府側の意図もあっただろう。

IMFも8月14日に声明を発表。「7月28日、アルゼンチン当局とIMFスタッフは、アルゼンチンへの30カ月間の拡大信用供与措置(EFF)の下、第5回と第6回を合わせた審査についてスタッフレベルで合意に達した。この合意は、8月23日に開催される予定のIMF理事会の承認を条件とし、合意された支出を解除する。われわれは、安定を守り、外貨準備を回復し、財政秩序を強化するための当局の最近の政策行動と今後のコミットメントを歓迎する」としている。

なお、8月14日の、国内を代表する株価指数のS&Pメルバル指数は、8月11日に比べて3.30%高い496,114.56となっている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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