GDP成長率予測、2023年を1.3%、2024年を1.2%に修正

(スイス)

ジュネーブ発

2023年09月28日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は920日、2023年通年のGDP成長率予測(スポーツイベント調整後:注)を1.3%とし、前回6月の予測(2023627日記事参照)から0.2ポイント上方修正した。一方で、2024年のGDP成長率は1.2%とし、前回予測から0.3ポイント下方修正した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、添付資料表参照)。

スイス経済は好調な2023年第1四半期(13月)の後、第2四半期(46月)は産業部門の投資と付加価値はいずれも減少し、失速した。しかし、個人消費は堅調を保ち、サービス部門は全般的に伸びており、SECOはこの傾向が今後数カ月続くと見ている。

世界経済については、第2四半期は低調なユーロ圏に対して米国経済は堅調に拡大、中国経済は予測どおり成長したが、近い将来に減速する兆しがあるとした。ユーロ圏も今後数四半期にわたり、これまでの予測を下回り低成長となる見込みで、世界経済全体の回復には時間を要する可能性が高いとした。消費者物価指数(CPI)から価格変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数の上昇率(コアインフレ率)が依然として高く、金融引き締め政策により経済成長が抑制される見通しと分析する。

こうした状況の中、SECOは、第1四半期の力強い成長を受けて、2023年通年のスイスのGDP成長率予測を1.3%へ引き上げた。堅調な労働市場が雇用を増やし、個人消費の伸びが経済成長を下支えするとした。2023年のインフレ率については2.2%とし、前回予測の2.3%から微修正した。一方で、足元の通貨スイス・フラン高と世界需要の鈍化により、財の輸出が打撃を受けると予想する。設備稼働率の低下と金利上昇が投資活動を抑制し、設備投資や建設投資が鈍化するため、下半期の成長は弱まるとの見方を示している。

2024年については、世界需要の回復とともにスイスの輸出はある程度回復するが、消費支出は減速し、景気減速が労働市場に波及すると見込む。2024年の失業率は2.3%と前回予測から据え置き、インフレ率は1.9%とし、前回予測の1.5%から引き上げた。

スイスの2023年と2024年のGDP成長率は2年連続して平均を大幅に下回る予測だが、SECOは景気後退には至らないと見方を示している。ただし、今回の予測は20232024年にかけての冬季に大規模な生産損失を伴うエネルギー不足が発生しないことを前提としている。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部があるため、イベント開催年に放映権収入がGDPを押し上げ、翌年はマイナスに作用するのが通例。このため、SECOはこの影響を除いた調整値を別途算出している。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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