欧州投資銀行、中東欧地域企業の投資動向を分析、イノベーション投資でEU平均を上回る

(EU)

ブリュッセル発

2023年09月08日

欧州投資銀行(EIB)は8月30日、中東欧諸国(注)の企業の投資動向に関するアンケート調査をまとめた報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同報告書は、ポーランドのカルパチで9月上旬に開催される経済フォーラムでの発表を前に、ワルシャワ経済大学が公表したもの。

報告書によると、新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻による危機から回復基調にあり、中東欧諸国の企業の投資水準(77%)は、EU(80%)や米国(81%)の平均に匹敵する。企業は旧来の資本集約的な成長モデルから脱し、特に最新技術の活用やイノベーションに関連した新たな機会を模索している。

中東欧諸国の企業の投資の配分割合は平均で、46%が生産能力(既存の建物、機械、設備、ITを含む)の向上・交換に充てられ、EU平均と同じだった。次いで、既存製品やサービスの生産・提供能力の拡大(25%)、技術革新(17%)が続いた。特に製造業と大企業では、技術革新への投資が多かった。国別では、ポーランド(22%)、スロベニア(19%)、チェコ(17%)で新製品やサービスの開発向けの投資が活発に行われていた。

中東欧諸国の企業が機械や設備に投資した割合は平均で53%となり、EU(49%)や米国(47%)の平均を上回った。産業別にみると、製造業では投資の60%、建設業では59%を機械や設備への投資に充てた。製品やサービスの技術革新への投資割合も、中東欧諸国では平均27%と、EU(24%)と米国(21%)を上回った。サービス業では、特にデジタル技術への投資割合が多く、平均で18%だった。

中東欧諸国での投資に対する長期的な障壁に関しては、EUと同様に、将来に対する不確実性(87%)や、エネルギー価格(87%)、熟練労働者の確保(82%)の回答割合が最も多かった。

中東欧諸国はエネルギー生産に占める化石燃料の割合が高く、エネルギー集約的な生産方法が主流となっており、カーボンニュートラル(炭素中立)対策のために必要な費用を懸念する傾向がある。このため、より厳しい気候変動対策や規制への対応を脅威とみなす企業は36%に上り、商機としてとらえる企業の割合(18%)を上回った。EU全体では、脅威(32%)と商機(29%)と捉える企業の割合は同程度になっている。また、中小企業(14%)に比べ、大企業(22%)の方が、カーボンニュートラルへの移行を商機と捉えている。

一方で、EU平均と同水準となる90%近くの中東欧諸国の企業は、温室効果ガス排出量の削減を目指し、より環境に配慮したビジネスモデルに向けた措置を講じている。具体的には、廃棄物の削減と処理(67%)、エネルギー効率化への投資(55%)だった。EU平均(43%)と比べ投資が少ない分野は、持続可能な輸送で32%となった。地域別でみると、ルーマニア(93%)とポーランド(90%)はこのような措置を講じる可能性が高いものの、ブルガリア(70%)は低かった。

EIBの分析によれば、中東欧諸国の企業による製品やサービスの技術革新への投資は、EU平均を上回っており、今後、同地域の発展を加速させ、新たな雇用を創出し、国際市場における同地域の競争力を高める。また投資の大部分は、生産能力の向上や拡大に伴うもので、これにより企業活動は将来的に、より効率的で環境に優しいものになる見込みだとしている。

(注)ポーランド、チェコ、クロアチア、スロベニア、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、エストニア、リトアニア、ラドビアの11カ国。

(大中登紀子)

(EU)

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