G20サミットで世界バイオ燃料同盟発足、ブラジル、インド、米国が主導

(ブラジル、インド、米国、G20)

調査部米州課

2023年09月15日

インドのナレンドラ・モディ首相は9月9日、インドで開催されたG20サミットで、バイオ燃料の生産と使用の拡大を目指す「世界バイオ燃料同盟(GBA)」の発足を発表し、G20各国に参加を呼びかけた。

かねてバイオ燃料生産が盛んなブラジル、米国に加えて、近年バイオ燃料の生産拡大とガソリンへのエタノール混合比率の段階的引き上げを推進するインドの3カ国が主導し、その他19カ国と12の国際機関が参加する。国際エネルギー機関(IEA)によると、GBAでは、長期戦略の策定、関連投資やイノベーションの促進、燃料の安定供給の確保、国際協力の奨励などの協力を通じて、バイオ燃料の生産と使用が強化されることが期待される。

G20サミット閉幕後の11日の記者会見で、ブラジルのマウロ・ビエイラ外相は「GBA発足の発表は、今回のG20サミットの最大のハイライトで、間違いなくこのサミットに大きな貢献をした」と称賛した。また、同じ記者会見でブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は「ブラジルはエタノール生産で50年の歴史があることは誰もが知っており、他国に教えられることがたくさんある」と述べた。ルーラ大統領の発言は、インドやその他加盟国でのブラジル企業などの貢献を念頭に置いたものとみられる。

IEAが7月24日に発表した「Biofuel Policy in Brazil, India and the United StatesPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によると、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロを達成するためには、世界のバイオ燃料生産量を2030年までに3倍にする必要があると推定されている。ブラジルのエネルギー政策諮問委員会(CNPE)メンバーのプリニオ・ナスタリ氏は、バイオ燃料市場が今後拡大する可能性について触れ、「サトウキビ由来のエタノール生産で、リーダーのブラジルにビジネスがもたらされる可能性がある。フレックス燃料車(注)や関連技術を輸出できるようになるだろう」と分析している(「BBC NEWS BRASIL」9月9日付)。

バイオエタノール活用の動きは既に活発化

ブラジルでは、バイオエタノール活用に向けた議論は既に活発化している。政府レベルでは、鉱山・エネルギー省が4月28日に、ガソリンへのエタノール混合を27.5%から30%に引き上げるアイデアを提案している。また、同省は今後10年で、サトウキビ由来だけでなく、トウモロコシ由来のエタノールも生産量が増加することを踏まえ、エタノールの供給量が増えていく見通しも示している。

民間レベルでは、2021年にブラジル自動車製造業者協会(ANFAVEA)も自動車業界でのバイオ燃料車による二酸化炭素(CO2)削減効果の優位性を評価しており(2021年8月27日記事参照)、直近ではトヨタ(2023年4月27日記事参照)やスティランティス(2023年8月10日記事参照)がバイオエタノールも利用可能なフレックス車の生産を発表している。

(注)ガソリンとバイオエタノールとの組み合わせで走行できる車。

(小西健友)

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