シンガポールのシンクタンク、ASEANの気候変動に対する意識調査の最新結果を発表

(ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

シンガポール発

2023年09月22日

シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所〔旧・東南アジア研究所(ISEAS)〕は9月21日、ASEAN加盟国の国民の気候変動に対する意識などを調査した「東南アジア気候見通し:2023年調査報告」(Southeast Asia Climate Outlook:2023 Survey Report)を公表した。

同報告によると、「気候変動をどのように考えているか」との問いに、ASEAN全体では「自国に深刻かつ差し迫った脅威」(49.4%)を選択した割合が最も高く、「監視に値する重要な問題」(41.9%)、「長期的な脅威で、自身の生涯に影響を与えることはない」(4.5%)などが続いた(注)。「自国に深刻かつ差し迫った脅威」との回答は2022年調査(46.6%)から割合が上昇したが、2021年調査(68.8%)からは低下した。ISEASは報告書で、気候の脅威に対する緊急性が低下していることに懸念を示すとともに、「インフレ圧力の上昇や、エネルギーと食料価格の上昇、雇用を奪うかもしれないサプライチェーンの途絶の脅威といった危険をはらんだ(新型コロナウイルスの)パンデミック後の回復が現在の関心事ということと関連している可能性がある」と指摘した。

他方で、「自国の炭素税(の導入)を支持するか」との問いについては、「支持する」との回答が68.7%、「自国の化石燃料補助金を削減すべか」の問いには、「削減すべき」が51.1%に達した。「自国が石炭を廃止すべき時期」の問いについては、「即時」(2022年調査30.7%→2023年調査34.9%)と回答した割合が最も高く、「2030年までに廃止」(31.3%→29.4%)、「2040年までに廃止」(12.4%→14.4%)が続いた。2022年調査では、「2030年までに廃止」との回答割合が最も高かった。

この調査はISEASが2020年から毎年実施しており、今回で4回目。最新の調査はASEAN加盟国の学術界・シンクタンク・研究機関、産業、政府、地域組織・政府間組織・国際機関、市民社会組織、メディア、学生、退職者などに分類される計2,225人の回答をまとめた。調査期間は2023年7月10日から8月7日。報告書はISEASのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧できる。

(注)紹介したASEAN全体のデータについては、人口や年齢で重み付けされている。過去に発表したデータも同様に処理されているため、過去の調査報告書内のデータと異なる場合がある。

(朝倉啓介)

(ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

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