米・ブラジル首脳、労働者支援のパートナーシップ立ち上げ、他国にも参加呼びかけ

(米国、ブラジル)

ニューヨーク発

2023年09月22日

米国のジョー・バイデン大統領は9月20日、ニューヨークで開催されている第78回国連総会に参加したブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領と2国間の首脳会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。両首脳はこの機会に「労働者の権利のためのパートナーシップ」を立ち上げた。

このパートナーシップは、米国とブラジルが共同して立ち上げたグローバルな枠組みとしては初めてのもので、全世界の労働者を支援することを目的としている。バイデン大統領は就任当初から、民主党の重要な支持母体の1つの労働組合を重視する政策を推進してきた。ルーラ大統領も自身が労働組合出身ということもあり、両首脳の利害が一致したものとみられる。パートナーシップ立ち上げにかかる両国の共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、次の5点について協力関係を深める。(1)ILO中核的労働基準で定義されている労働者の権利の保護、労働者への権限付与、強制労働や児童労働を含む労働者からの搾取の撲滅、(2)安全で健康的かつ働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)、官民投資での説明責任の向上、(3)労働者中心のクリーンエネルギー転換の推進、(4)全ての利害関係者に利益のある技術・デジタル転換の促進、(5)特に女性やジェンダー・人種的マイノリティーを対象とした職場での差別への対抗、ダイバーシティー推進、労働参画促進。

また、両国政府と労働組合も巻き込んで、11~12月にアラブ首長国連邦(UAE)で開催の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)や、ブラジルが主催を務める2024年のG20、2025年のCOP30にも議論をつなげていくとしている。

バイデン大統領は首脳会談後の共同記者会見で「今回の発表は世界中のリーダーや労働組合に対して、各国の労働者が尊厳と尊敬をもって扱われるより良い未来のために、われわれと協力しようという招待でもある」として、他国の参加も呼びかけた。記者会見にはILOのジルベール・ウングボ事務局長も参加し、今回のパートナーシップへの支持と協力を表明している。

両首脳はこのほか、ベネズエラやハイチでの政情不安について議論を行ったとしている。また、バイデン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻が特に最貧国の食料とエネルギー安全保障に影響与えている点に懸念を表明し、ロシアが「黒海穀物イニシアチブ」に戻るべきとの意図を伝えたとしている(2023年7月20日記事参照)。ルーラ大統領は8月に南アフリカ共和国で開催されたBRICS首脳会議にも出席しており、BRICS重視の姿勢を表明している(2023年9月4日記事参照)。ロシアにも近く、ウクライナ情勢での和平実現にも取り組んでいるルーラ大統領に協力を求めたものとみられる。

(磯部真一)

(米国、ブラジル)

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