ウクライナ産穀物輸出合意が停止、ロシアが延長に反対

(ウクライナ、ロシア、トルコ、世界)

調査部欧州課

2023年07月20日

ロシア外務省は7月17日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」に関する声明を発表し、同日に期限を迎えたイニシアチブの延長に反対するとし、合意当事国のトルコ、ウクライナと国連事務局に通知したことを明らかにした。これにより7月18日にイニシアチブの効力が停止した。

外務省は声明の中で、2022年7月のイニシアチブ締結の際に、ロシアと国連事務局との間で締結したロシア産農産物と肥料輸出の正常化に関する覚書の実施に前進がないことを挙げたほか、ウクライナが人道的海上輸送路を隠れみのに、ロシアの民間および軍事施設を攻撃していると批判した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は17日、ロシアの決定は飢餓や食料価格の高騰に苦しむ数億人の生命線を断つものとして、深い遺憾を表明した。

ウクライナのドミトロ・クレバ外相は18日に行われた国連安全保障理事会の会合で「ロシアは協定に復帰して、飢餓ゲームをやめるべき」と訴えた。デニス・シュミハリ首相は18日の閣議で、ボロディミル・ゼレンスキー大統領名でトルコのエルドアン大統領と国連のグテーレス事務総長に対し、ロシアを除いたかたちでのイニシアチブ運用の継続を提案するレターを送ったことを明らかにした。

イニシアチブの正式名称は「ウクライナの港からの穀物および食料の安全な輸送に関するイニシアチブ」。2022年7月に国連の仲介でウクライナ、ロシア、トルコが署名した。署名3カ国と国連が共同で、ウクライナのオデーサ、チョルノモルスク、ユージニーの黒海沿岸3港からウクライナ産穀物を輸出する船舶の安全な航行を確保することが目的。当初の有効期間は120日間で、署名国の異存がなければ120日間延長される。直近の延長は2023年5月で、60日間延長された。ウクライナのオレクサンドル・クブラコフ副首相(復興担当)兼地方・国土・インフラ発展相は自身のSNSで、7月18日まで延長されたと記したが(2023年5月26日記事参照)、その後、国連やロシアが、7月17日が期限としていた。

(浅元薫哉)

(ウクライナ、ロシア、トルコ、世界)

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