政府、大豆関連品目の輸出拡大を目指し、新たな「大豆ドル」導入

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年09月08日

アルゼンチン政府は9月5日、必要緊急大統領令(DNU)443/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、9月30日までの期間限定で、通称「大豆ドル」と呼ばれる大豆関連品目の輸出に優遇為替レートを適用する「輸出拡大プログラム」を再び導入すると発表した。ただし、今回の措置では輸出代金全額の通貨ペソへの交換に優遇為替レートを適用するのではなく、輸出代金の75%については従来どおり公式為替レートでペソに交換することを義務付け、残り25%は「自由に交換できる」と定めている。「輸出拡大プログラム」は当初、大豆関連品目を対象に、輸出代金のペソへの交換に優遇為替レートを適用する制度だった。その後、大豆関連品目が対象から除外され、農産品全般を対象とする制度に刷新されていた。

今回の制度で輸出代金の75%に適用される公式為替レートは、9月5日時点で1ドル=365.50ペソとなっている。各種報道によると、残り25%は「自由に交換できる」と定めている点について、交換レートは輸出者の判断によって適用する為替レートを自由に選択できるとの専門家の見方を伝えている。公式為替レート以外の為替レートとは、例えば、優良スワップレート(CCLレート)や株取引レート(MEPレート)があるが、専門家によってはMEPレートのみ選択可能との見方もあり、見解は一致していない。9月5日時点のMEPレートは1ドル=672.34ペソなっており、ドル建て輸出代金を公式為替レートよりはるかに有利な為替レートで交換できることになる。

今回の制度の適用を受けるには、過去18カ月間に輸出実績があることと、輸出税の課税額の半分を事前に支払うことを条件としている。対象品目は大豆(NCM1201.90.00)、大豆油(NCM1507.10.00、1507.90.11、1507.90.19、1507.90.90)、大豆かす(NCM2302.50.00)、大豆油かす(NCM2304.00.10、2304.00.90)、大豆によるバイオディーゼル(NCM3826.00.00)となっている。

政府は「これら品目の輸出拡大は国内の穀物供給、また一般家庭の食料バスケットや物価上昇に影響はない」「輸出を促進することで輸出税を通じて税収を増加させることが目的」としており、外貨準備高の積み増しを狙っている。

9月5日付の現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)によると、アルゼンチン植物油産業会議所・穀物輸出センター(CIARA-CEC)は今回の制度に強く批判はしていないものの、「複雑だ」としており、「最も有益な政策は、為替レートを統一して全ての規制を撤廃することだ」と表明した。アルゼンチン農牧協会(SRA)は「農業セクター全体に利益をもたらす措置が必要」として、今回の政府の取り組みを批判している。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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