米ホワイトハウス、政府閉鎖が生じた場合の影響発表、安全保障分野などへの波及懸念

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月28日

米国ホワイトハウスは、2024会計年度が始まる10月1日までに連邦議会が予算案を可決できず、政府機関の閉鎖(政府閉鎖)が生じた場合の影響について、分野ごとに順次、具体的な数値を発表している。9月19日にジョー・バイデン大統領は声明を発表しており(2023年9月21日記事参照)、ホワイトハウスの発表はこの項目に沿って深掘りしたものだ。

9月27日までに発表している内容は次のとおり。

  1. 女性・乳児・子供のための特別補助栄養プログラム(WIC)への影響外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、対象者700万人が食料供給を得られなくなる。
  2. 航空業界への影響外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、1万3,000人の管制官と5万人以上の保安職員の給与が支払えなくなることから、フライトの大幅な遅延が生じる。
  3. 米軍への影響外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、130万人の軍人の給与が支払えなくなるほか、国防総省の数十万人の職員も一時帰休となり、米国の安全保障を揺るがすこととなる。

なお、政府閉鎖を回避するべく、連邦議会上院では9月26日に、超党派による暫定支出法案が提出され、週内の可決に向けて準備を進めている。法案は、11月17日まで現在の水準で政府機関に資金を提供するもの。ただし、ウクライナ支援の費用60億ドルが含まれる一方で、米国南部での国境管理措置の費用は盛り込まれていないなど、下院共和党保守派などが求める内容とは大きな隔たりがあり、上院で可決したとしても、同内容で下院を通過するのは困難とみられている(政治専門誌「ポリティコ」9月26日)。

また、3大格付け会社(注)の中で唯一、米国債を最上位の「Aaa」と評価しているムーディーズ・インベスターズ・サービスは9月25日、政府閉鎖が発生した場合の影響について見解を発表した。この中で「政府閉鎖による経済への影響は、短期的かつ政府の役割が大きい分野に集中する可能性が高く、経済全体への影響は限定的だ」「政府閉鎖が短期間の場合には、債務返済も影響は受けない(債務不履行に陥らない)」とした。その一方で、「米国の制度とガバナンスの弱さ、特に財政赤字の拡大と債務負担能力の悪化によって財政的な力強さが低下する中で、政治的な二極化が深まることにより、財政政策が重大な制約を課されていることを証明することになる」として、米国債の信用にマイナスの影響が生じると警告した。

(注)フィッチ・レーティングス、S&Pグローバル・レーティングス、ムーディーズ・インベスターズ・サービスの3社。

(加藤翔一)

(米国)

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