米商務省、ロシアやイランの無人航空機、中国の軍事研究に加担する事業体を輸出管理対象に追加

(米国、中国、フィンランド、ドイツ、オマーン、パキスタン、ロシア、アラブ首長国連邦、イラン、トルコ)

ニューヨーク発

2023年09月26日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月25日、ロシアやイランで行われる無人航空機(UAV)開発への協力や、中国の軍事研究への支援などを理由に、28の外国事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加した。正式には9月27日付の官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされ、同日付で有効となる。

ELとは、米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。今回追加した28事業体の国別の内訳は、中国11、フィンランド3、ドイツ1、オマーン2、パキスタン5、ロシア5、アラブ首長国連邦(UAE)1となっている。

BISは今回のEL追加理由について、ロシアの諜報機関向けのUAV用部品をEARに違反して取引したことや、イランの大量破壊兵器およびUAVプログラムの支援、中国の軍事研究への支援など、米国の国家安全保障および外交政策上の利益に反する行為に加担したことを挙げている。今回追加された事業体にEAR対象製品の輸出などを行う場合、ほとんどの事業体について、許可申請をしても原則不許可または食糧・医薬品などごくわずかな品目を除いて不許可の審査方針が取られることになっている。

イランのUAV開発を制裁のターゲットに

なお、財務省は9月19日に別途、イランのUAVおよび戦闘機の開発を支援する多国間ネットワークに対して制裁を発動外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。具体的にはイラン、中国、ロシア、トルコに拠点を置く個人7人と4つの事業体を金融制裁の対象である「特別指定国民(SDN)」に指定した。バイデン政権は2022年以降、ロシアがウクライナ侵攻でイラン製UAVを使用している疑いなどを理由に、関連する個人・事業体に制裁を発動してきた(2022年9月16日記事参照)。ブライアン・ネルソン財務次官は「米国はイランのUAV調達ネットワークに対して措置を取り続けるとともに、関連部材のイランへの輸出を阻止するために必要なデューディリジェンスを行うよう各国に働きかけていく」との声明を出している。SDNに指定された個人・事業体には、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注2)。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた企業などの詳細は財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(磯部真一)

(米国、中国、フィンランド、ドイツ、オマーン、パキスタン、ロシア、アラブ首長国連邦、イラン、トルコ)

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