欧州委の企業課税や中小企業支援政策パッケージ、産業界はおおむね評価
(EU)
ブリュッセル発
2023年09月27日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は9月12日、欧州委員会が同日発表した、大企業に対するEU共通の所得課税の枠組み(BEFIT)に関する指令案と域内の移転価格に関する指令案(2023年9月22日記事参照)についてコメントを発表した(プレスリリース)。両指令案は企業投資と単一市場での事業拡大を促す可能性があると歓迎したが、OECDやG20など多国間機構やシステムで行われる国際的なルール形成と引き続き歩調を合わせなければならないと念押しした。また、両指令案の実施にあたっては整合性をとる必要があり、税務申告のさらなる簡素化や、EU加盟国間や域外国との間での移転価格を巡る係争の抑止につなげるべきだとした。
中小企業支援パッケージの支払い遅延規則案には強い懸念の声
ビジネスヨーロッパは、欧州委が同日発表した中小企業支援政策パッケージ(2023年9月27日記事参照)についてもコメントを発表。中小企業が受ける影響を考慮して規制を実施する方針や欧州委委員長に直接助言する「EU中小企業担当官」の新設、さらに企業の報告義務の削減といった提案を歓迎した(プレスリリース)。しかし、すべての商取引の支払期限の上限を請求書の受領から一律「30日以内」に設定するとした支払い遅延防止規則案については懸念を示した。企業間取引において迅速な支払いは最重要で、より短期の期日設定は中小企業のキャッシュフローを増やすと理解を示しながらも、企業間契約で支払期日を取り決める自由は維持されるべきだと主張した。
同規則案については、欧州の小売・卸売業界団体ユーロ・コマースも同日付声明で、支払い遅延への対応は最重要課題だが、期日を全取引一律に定めるのは「誤った対応」と批判した(プレスリリース)。ユーロ・コマースは、販売期間が長い商品や季節商品を扱う小売・卸売業では交渉で支払期日を定める商慣習が確立しているとして、企業間で柔軟に期日を設定することが不可能となることに憂慮を示した。また同規則案は、EUの中小企業の25%を占める小売・卸売業の資金調達力や競争力に加え、雇用や地元経済に影響を与えると主張。欧州議会と各国政府に対し、規則案がもたらすリスクを理解し、企業間の交渉や契約の自由を維持しながら支払い遅延を減らす「適切なバランス」を実現するよう求めた。
(滝澤祥子)
(EU)
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