州議会選挙、勢力図変わらず、野党の躍進目立つ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年08月15日

マレーシアの6州は、8月12日に州議会選挙の投開票を実施した(2023年7月6日記事参照)。アンワル・イブラヒム政権下では初の州議会選挙として、現政権に対する信任を問う場だったが、全州ともに選挙前に政権を担っていた政党連合が過半数を獲得し、選挙前から勢力図は変わらなかった。アンワル首相は12日、セランゴール、ネグリ・センビラン、ペナンの3州で、自身率いる希望連盟(PH)と国民戦線(BN)の与党連合が勝利したことを受け、「選挙結果は有権者の判断の結果」とした上で、「これまで以上に精力的に政権運営に取り組み、誇りに思える成功をマレーシアにもたらしたい」と意欲を示した。

投票率は2州で6割超、4州で7割を超え、うちトレンガヌ州が74.8%と最高だった(添付資料表参照)。6州の平均は70.4%と、2022年11月の総選挙時(73.9%)には届かなかった。

野党の攻勢目立ち、与党連合の勝利とは言い切れず

与党連合は先述の3州で過半数を維持したが、各州で議席を減らし苦戦を強いられた。6州全245議席のうち、与党連合の議席数は99議席にとどまり、他方の野党・国民同盟(PN)はこれを大幅に上回る146議席を獲得した。とりわけBNの獲得議席総数は19と、選挙前の42から半分以下へ縮小した。

最も有権者数の多いセランゴール州でもこの構図が鮮明だった。与党連合は34議席を獲得したものの、議席数は大幅に減少した。シンガポール国際問題研究所(SIIA)のオー・エイサン上級研究員は「セランゴール州など与党連合が政権を維持した州でも、PNは次の総選挙でさらに勢力を伸ばす可能性もある」と見通している。

従来も野党連合であるPNが政権を握っていたケダ、クランタン、トレンガヌの3州では、PNは過半数を維持するにとどまらず、選挙前と比べても大幅に議席数を伸ばした。特にトレンガヌ州では、PNが全議席を押さえ、野党不在の状態になった。全マレーシア・イスラム党(PAS)の本拠地であるクランタン州でも、BNが保持していた議席をほぼPNで置き換えた。

ノッティンガム大学マレーシア分校のブリジット・ウェルシュ名誉研究員は「アンワル政権にとって最初にして最大の試練だった。結果的に3州で勢力を維持し、今のところ同首相は基盤を保持している」としつつ、「アンワル政権への積極的支持を示す結果ではない。与党連合が掌握する3州でもPHが議席を減らしたという事実は、政府が有権者との関わりを強化し、特に中核的な支持者の不満に対処するよう警鐘を鳴らすものだ」と批評した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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