約4年ぶりに公共交通機関利用料金が値上げ

(チリ)

サンティアゴ発

2023年08月23日

チリ運輸通信省は8月16日、首都圏州の公共交通機関(地下鉄とバス)の利用料金を8月20日から10ペソ(約2円、1ペソ=約0.17円)値上げすると発表した。値上げは普通利用料金のみで、割り引き対象の学生や高齢者の利用料金などは対象外となる。利用料金の引き上げは、2019年に発生した反政府デモの契機ともなったため、ガブリエル・ボリッチ現政権はこれまで値上げ実施に慎重な姿勢を見せていた。

今回値上げに踏み切った背景としては、国内のインフレ加速の影響が大きいとみられている。2019年当時のセバスティアン・ピニェラ大統領は反政府デモの過激化を受け、その契機ともなった公共交通機関利用料金の値上げ(30ペソ)の凍結措置を発表した。以降は約4年間にわたって据え置かれてきたものの、専門家委員会は、近年の燃料価格高騰などの事情を踏まえると、本来この4年間で220ペソ程度の値上げが必要だったとの見解を示していた。さらに、同委員会は今回の料金値上げに当たって、20ペソ程度の金額設定を推奨していたが、政府との折衝の結果、値上げ額は10ペソとなり、公共交通機関の運営に係る赤字の補填(ほてん)については、政府拠出の補助金によって賄うことが明らかとなっている。

フアン・カルロス・ムニョス運輸通信相は「たとえどんなに少額であっても、利用料金の値上げは家庭に影響を与えることを認識しているものの、それと同時に、利用料金を永久に凍結することができない点についても、これまでに度々言及してきた」とコメント。加えて、9月1日から新たに3万8,000ペソの公共交通機関利用料金の月額上限を設定するとも発表されており、日々の通勤などで頻繁に地下鉄やバスを利用するユーザーにとってのインセンティブとなることが見込まれている。

(岡戸美澪)

(チリ)

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