「2024年問題」を前に地元港を活用した貿易拡大を後押し、伏木富山港
(富山、世界)
調査部国際経済課
2023年08月15日
富山県および国際拠点港伏木富山港ポートセールス事業推進協議会は8月7日、伏木富山港の利用促進を目的とした現地説明会をジェトロと共催した。国内輸送における人手不足などの課題への懸念を背景に、地元港を活用した企業の貿易取引拡大を後押しする狙いだ。同港の現状の視察、利用に対する補助金制度などの情報提供を行い、富山県内外から約100人が参加した。
伏木富山港は、伏木地区の伏木港、新湊地区の富山新港、富山地区の富山港の3地区で構成された港湾で、1986年6月に特定重要港湾(2011年4月から港湾法改正のため国際拠点港湾)に指定された。富山新港にはコンテナ貨物を取り扱う国際物流ターミナルがあり、約11万5,000TEU(20フィートコンテナ換算)の取り扱い容量を有する。2022年の取り扱い貨物量は7万5,000TEUで、供用を開始した2002年時点から約2倍に増加した。富山県では、2026年度までに年間11万TEUの取り扱いを目指す。
富山新港の国際物流ターミナル視察の様子(ジェトロ撮影)
伏木富山港の利用促進に当たっては、「2024年問題」と呼ばれる日本国内のトラックドライバーの時間外労働規制強化に伴う人手不足が背景にある。陸路で名古屋港や阪神港を利用した輸出入をしている地元の荷主企業にとって、ドライバーの確保難やコストの増加などが課題となることから、長距離陸送が不要な地元港の活用を1つの打開策として提案している。また、太平洋側の港湾での混雑や災害などへのリスクに対応すべく、BCP(事業継続計画)の観点からも活用を働きかけているという。2023年5月からは阪神港への国際フィーダー船も就航し、米国や欧州向けの航路へのアクセスも広がった。
富山県では、伏木富山港を利用する企業に対して助成金制度も整備しており、試験的な利用を行う企業にも最大100万円の補助を行うトライアル補助金をはじめ、様々な補助制度の活用について紹介した。
富山県担当者によると、「太平洋側の主要港湾に比べると定期航路の数や便数が少ないため、荷主企業の求めるリードタイムの面で差が出てくる」と指摘する。しかし、荷主企業、物流業者双方にとっても、「『2024年問題』の影響は大きく、物流コストの見直しという点からも地元港の利用検討は重要」という。
(田中麻理)
(富山、世界)
ビジネス短信 ed2cc45b5251feb9