米商務省、核不拡散目的で中国・マカオ向けの輸出管理を強化

(米国、中国、マカオ)

ニューヨーク発

2023年08月14日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は8月14日、核不拡散を理由に、中国とマカオ向けに輸出管理規則(EAR)の一部を強化する最終規則を官報で公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。規則は8月11日から有効となっている。

原子力関連の資機材・技術の国際的な輸出管理については、有志国の多国間枠組みの原子力供給国グループ(NSG、注1)で、参加国が従うべきガイドラインが作成されている。米国もNSGに参加しており、ガイドラインで管理すべき製品(物品・技術・ソフトウエア)に関して、BISが管轄する国内法令の輸出管理規則(EAR)上の規制品目リスト(CCL)に反映している。一方、同ガイドラインに掲載されていない一部の製品についても、米国独自で輸出管理対象に指定しており、これらはCCLで「核拡散防止規制2(NP2)」に分類されている(注2)。BISは今回の規則に基づき、EAR上のカントリー・チャート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注3)で、中国とマカオ向けの規制理由に「NP2」を加えた。これにより、CCL上で「NP2」と記されている製品をEAR上のカントリー・グループ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注4)で「D:2」(核拡散の懸念国)と指定されている国・地域および中国、マカオに輸出など(輸出、再輸出、国内移送を含む)行う場合には、BISからの許可が必要となる。

BISはこれまでにも、中国軍の利用に供する目的で米国製品の入手に関与したことなどを理由に、中国の原子力関係の企業や研究機関をEAR上のエンティティー・リスト(EL、注5)に追加してきた。それらEL追加対象の中には、BISが2022年10月に導入した中国向けの先端半導体やスーパーコンピュータに関する輸出管理措置(2022年10月11日記事参照)で、より厳しい制約が課された事業体も含まれている。それらは具体的に、核爆発に関する活動に利用されたスーパーコンピュータを扱っていたとされる。このように、中国が官民挙げて軍事用途のために先端的なデュアルユース製品の開発・入手に取り組んでいることを受けて、BISは核不拡散に関する輸出管理を強化する必要があると判断したとしている。

(注1)1974年のインドの核実験を契機に創設され、1978年に参加国が従うべき輸出管理の方針を示したNSGガイドラインを制定した。米国、日本、中国をはじめ48カ国が参加している。ガイドラインは法的拘束力のない紳士協定との位置づけとなる。詳しくは外務省の解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注2)製品ごとに5桁で割り振られる輸出管理分類番号(ECCN)では、1A290、1C298、2A290、2A291、2D290、2E001、2E002、2E290に該当し、劣化ウランや非原子力用途のグラファイト・重水素、原子力発電所向けの発電機やその他部品などが含まれる。

(注3)仕向け国・地域と規制理由・レベルで輸出許可の要否を規定したマトリックス表。

(注4)仕向け国・地域の懸念度に応じて分けた国別グループ。主に許可例外の適用の可否を定めるために使用される。

(注5)米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載するリスト。それら対象へ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、事前許可が必要となる。詳細はBISの解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(磯部真一)

(米国、中国、マカオ)

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