IMF理事会、経済・財政改革実施レビュー結果を承認、外貨準備高は依然厳しい状況

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年08月30日

IMF理事会は8月23日、アルゼンチンに対する拡大信用供与措置(EFF)による支援に関する第5回、第6回の経済・財政改革実施レビュー結果を承認した。これにより、アルゼンチンは約75億ドルの融資の支払いを受けることができるが、外貨準備高は依然として厳しい状況にある。第7回のレビューは11月に実施される。

IMFが8月25日に公表した第5回、第6回レビューのスタッフレポートによると、IMFとアルゼンチン政府が合意していた基礎的財政収支、中央銀行による財政ファイナンスのシーリング(最高限度額)、外貨準備高の純増に係る2023年6月末までの定量的な四半期目標は、大幅な未達だった。具体的には、基礎的財政収支の赤字幅はGDP比0.8%の目標に対して同1.1%、財政ファイナンスは3,730億ペソ(約1,567億円、1ペソ=約0.42円)の目標に対して1兆3,580億ペソ、外貨準備高の純増(2021年末比)は、65億ドルの目標に対してマイナス47億ドルだった。

IMFは、目標の大幅な未達の原因は、歴史的な干ばつと政策の遅れだとしている。厳しい経済情勢を受けて、アルゼンチン政府は、基礎的財政収支の2023年の年間目標はGDP比1.9%の赤字で維持するが、財政ファイナンスのシーリングについては年間目標を当初のGDP比0.6%から0.8%に、外貨準備高の純増については年間目標を2021年末比80億ドルの純増から13億ドルの純増に下方修正することを要請し、IMF理事会は、政策の後退を是正し、プログラムの目標を確保するための新たな政策パッケージを実施するというアルゼンチン政府のコミットメントとともに承認した。加えて、一時的な資本取引規制や二重為替制度の導入を容認した。

また、スタッフレポートは2023年8月15日時点のアルゼンチンの外貨準備高を詳細に伝えており、流動資産はマイナス141億ドルで、金、SDRを含む純外貨準備高はマイナス103億ドルであることを明らかにした。グロスの外貨準備高は238億ドルであり、中国人民銀行とのスワップ協定、外貨建て準備預金により支えられている。天然ガスパイプラインの完成によるエネルギー輸入の減少や、気候条件の改善など、短期的には外貨の節約と外貨の流入の増加が見込まれるものの、外貨準備高は依然として厳しい状況にある。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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