化学産業ロードマップを初策定、2030年までに高度化へ
(マレーシア)
クアラルンプール発
2023年08月08日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は8月4日、同国としては初の化学産業に関する工程表「化学産業ロードマップ(CIR)2030」を発表した(MITIプレスリリース
)。CIR2030は、化学産業のさらなる専門化と高度化を目指し、MITIとマレーシア投資開発庁(MIDA)、国営石油会社ペトロナス、マレーシア化学工業評議会(CICM)が策定した。
MITIによると、化学はマレーシアの戦略産業の1つで、2022年時点のGDPの6%、製造業の総雇用者数の12.5%を占める。化学と石油化学部門は工業製品輸出の3割を占め、電気電子、輸送機器、農業、製薬など他の分野とも密接な関わりを持つセクターだ。MITIは、CIR2030を通じて国内で創出される総付加価値(GVA)に占める化学産業のシェアを現在の3.4%から2030年までに4.5%へ高めたい考えだ。化学分野のマレーシアへの外国直接投資流入額をASEANで首位とすることも目標として明記した。
CIR2030は、2030年までに化学産業を改革するための5つの具体的指針、20の戦略的重要分野、10の実現要素を概説している(CIR2030p16-20)。優先的に取り組む分野としては、(1)基礎化学品・中間材料(肥料、オレオケミカル、C1中間材料)、(2)プラスチック・ポリマー(高性能コンポジット、合成ゴム、プラスチック〔汎用(はんよう)・エンジニアリング用・高性能〕)、(3)特殊化学品〔農業用、ケア用、栄養用、電子用(注)、建設用〕を指定した。これら分野に対し、さらなる高付加価値化への移行を支援する。また、業界の統合緊密化、輸出競争力強化、生産の持続可能性向上を通じて、経済に対する化学部門の貢献を高めていきたい考えだ。
政府は先に発表したマダニ経済政策でも、今後焦点を当てるべき経済高度化に資する投資の実例として、特殊化学品の製造を挙げていた(2023年8月2日記事参照)。MITIは8月中にも「新産業マスタープラン(NIMP)2030」を発表する予定で、今回のCIR2030もこれを補完する位置付けにある。
(注)CIR2030は、マレーシアにおけるウエハー製造、ICパッケージング、プリント基板製造を下支えする電子用化学品は日本企業3社〔信越化学工業、イビデン、レゾナック(旧昭和電工)〕に大きく依存していると明記。同3社が生産するサブストレートや封止材などの重要性を示唆しつつ、将来的にはマレーシア自身を生産地として確立させ、輸入依存を緩和させたい考え。一方で、マレーシアでは新たな化合物を開発するなどの専門スキルの不足に直面しているとも指摘した。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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