米イリノイ州で銃器産業責任法が成立、銃規制をさらに強化
(米国)
シカゴ発
2023年08月21日
米国イリノイ州のJ.B.プリツカー知事(民主党)は8月12日、銃器産業責任法(Firearm Industry Responsibility Act, FIRA、SB0218)に署名した。同法は、即日発効した。同法によって、危険かつ違法なマーケティングおよび販売を行う銃製造業者は、イリノイ州での銃暴力の一因となる行為について責任を問われることになる。準軍事的または違法な民兵活動を奨励する広告やマーケティング、18歳未満の個人を対象とした漫画、ぬいぐるみ、衣類の使用広告を含む、違法な銃器の使用の奨励が禁止される。
同州のクワメ・ラウル司法長官は「銃器産業責任法は、詐欺的・欺瞞的商行為防止法(Consumer Fraud and Deceptive Business Practices Act)を行使する司法当局の権限を明確にするもので、詐欺的・欺瞞(ぎまん)的な行為をした企業の責任を、民事訴訟を通じて追及するための手段となる」と述べた。
イリノイ州は、銃規制に関連した法律を立て続けに制定している。2019年には銃の販売業者に対して州による認定を義務付ける法案(SB0337)、2021年には銃販売の際の身元調査を拡大し、銃器所有者身分証明書制度を現代化・強化する法案(HB0562)、2022年には中西部で初のゴーストガン(注1)を禁止する法案(HB4383)などが成立した。また、イリノイ州最高裁判所は8月11日、州内での殺傷能力の強い銃の販売や所持などを禁止する「イリノイ州コミュニティ保護法(注2)」について、一部の州下院議員が国民の武器保有権を保障する合衆国憲法修正第2条に反すると提訴したことに対し、「合衆国憲法の平等保護の保証にも、州憲法の特別立法禁止にも違反しない」との判決を下した(CBSニュース8月11日)。
なお、銃規制を推進する非営利団体エブリタウン・フォー・ガン・セーフティ・サポート・ファンドによると、イリノイ州の2018~2021年の銃による死者数の年間平均は1,622人で、全米35位となっている。
(注1)シリアルナンバーがない銃で、使用者が組み立てるのが一般的な銃を指す。イリノイ州の今回の法律では、3Dプリンターなどで作られたものも含まれる。
(注2)2022年7月にイリノイ州シカゴ郊外のハイランドパークで、独立記念日のパレード中に起こった銃乱射事件を受けて、殺傷能力の高い武器、大容量の弾倉、銃の殺傷能力を高める「スイッチ」の販売・流通を禁止した法律。2023年1月10日に発効。
(星野香織)
(米国)
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