上半期の郷里送金は過去最高額も、通貨ペソ高で目減り

(メキシコ)

調査部米州課

2023年08月08日

メキシコ中央銀行は8月1日、出稼ぎ労働者・移民などによる6月の本国宛て送金(郷里送金)額を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。2023年上半期(1~6月)の外国からメキシコへの郷里送金の総額は前年同期比9.9%増の302億3,800万ドルで、統計データが残る1995年以降、最高額を更新した。ドル建てで過去最高額を記録したものの、メキシコの通貨ペソに換算すると(注)、5,479億1,100万ペソ(約4兆5,476億6,130万円、1ペソ=約8.3円)で、前年同期比で1.7%減少している(添付資料図参照)。中銀によると、6月の対ドル為替レートの期中平均値は1ドル=17.24ペソとなっており、足元のドル安・ペソ高の影響を受け、送金先のメキシコで使用されるペソでの総額は前年同期比で目減りした。

2023年上半期の送金回数は7,900万回で、前年同期比9.4%増加した。1回の平均送金額は388ドルで、前年同期比0.5%増にとどまり、大きな変化は見られなかった。6月単月の郷里送金額は55億7,200万ドルで、前年同月比で8.3%増だったが、過去最高額を記録した前月比では2.1%の減少に転じた。なお、5月は「母の日」の影響で、送金の主な受け取り手のメキシコの家族向け送金が増加する傾向があるため、前月比の減少は季節的な要因と考えられる。

米国からの送金額が全体の96%

送金元の国を見ると、2023年上半期の送金額のうち96.0%が米国からだった。米国の州別では、カリフォルニア州が送金額全体の32.7%を占め、次いでテキサス州が14.4%、ミネソタ州が6.5%と続き、この3州からの送金額だけで、メキシコへの郷里送金の半分以上を占めた。受け取り先のメキシコの州別では、ハリスコ州が26億4,800万ドル(郷里送金額全体の8.8%)、グアナファト州が26億1,300万ドル(8.6%)、ミチョアカン州で26億100万ドル(8.6%)だった。

メキシコのシンクタンク、メキシコ・コモ・バモスのソフィア・ラミレス代表は「メキシコへの郷里送金はメキシコの低所得世帯の収入の3分の1を占めているが、一部の世帯しか郷里送金を受け取っていない」とし、郷里送金の増加によって国内消費の回復を下支えできるという考えを否定している(「エル・エコノミスタ」紙8月1日)。

(注)メキシコ中央銀行が発表している対ドル為替レートの各月の期中平均値を参考に計算。

(小西健友)

(メキシコ)

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