政府とIMF、約75億ドル支援の条件となる経済・財政改革実施レビューで合意
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2023年08月04日
IMFは7月28日、拡大信用供与措置(EFF)の第5回と第6回レビューで、アルゼンチン政府とスタッフレベルで合意に達したと発表した。今後開催されるIMF理事会で承認されれば、アルゼンチンは55億SDR(約75億ドル)のIMF融資の払い込みを受けることができる。
アルゼンチン政府とIMFは2022年3月、IMFから2018年に受けた約450億ドルの融資の返済について、拡大信用供与措置による新たな支援を受けることで合意している。同支援は双方が合意した経済政策プログラムの実施と目標を達成することを条件に、ディスバース(融資払い込み)スケジュールに基づき、融資金が分割して支払われる。このため、アルゼンチン政府がIMFから各融資金の払い込みを受けるには、四半期ごとにIMFのスタッフレベルが実施するレビューに合格しなければならない。
今回は、第5回(2023年3月末まで)と第6回(同年6月末まで)の状況について、レビューがまとめて行われた。IMFの発表によると、2023年6月末までの目標は未達だった。具体的には、干ばつの影響による大豆など穀物の輸出減少と政策の遅れにより、外貨準備高の純増、財政収支赤字、中央銀行による財政ファイナンスについて、達成基準を満たすことができなかった。干ばつの影響が大きかったことを踏まえ、双方は今後のプログラムの内容や目標について次のとおり合意した。
まず、為替政策、金融政策について、双方は、輸出を刺激し、輸入を抑制する措置を継続することや、通貨ペソの需要を高め、高インフレに対処するために実質金利をプラスに維持することに引き続き取り組むこと、並行為替市場の無秩序な動きへの対処に重点を置いた為替介入を行うことで合意した。
財政政策については、2023年の基礎的財政赤字目標は従来どおり対GDP比1.9%で変更せず、目標達成のために年後半の財政支出を引き締める。具体的には、公務員の賃金の伸びを抑制するとともに、電気などエネルギーへの補助金の累進性を改善、的を絞った社会支援と公営企業への支出の合理化を進める。また、中銀による財政ファイナンスへの追加的な依存を想定せず、従来どおりの目標の対GDP比0.6%を維持する。
外貨準備高については、目標が見直された。2023年3月に実施された第4回レビューで、2023年末時点の外貨準備高の積み増し目標(2021年末時点以降の累積の純増)は80億ドルだったが、10億ドルまで減額された。新たな目標は、ネストル・キルチネル・ガスパイプラインの第1期工事の完工によるエネルギー収支の改善、干ばつからの穀物輸出の回復により達成可能としている。
次回の拡大信用供与措置(EFF)に必要な第7回(9月末まで)のレビューは11月に実施される予定だ。10月22日に実施される大統領選挙までの期間は、IMFとの政策調整・合意作業はいったん落ち着いたかたちになっている。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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