7月の米小売売上高、前月比0.7%増と市場予想上回る伸び、無店舗小売りなどが寄与

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月16日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(8月15日付)によると、7月の米国の小売売上高(季節調整値)は前月比0.7%増の6,964億ドルで(添付資料表参照)、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.4%増)を上回り、4カ月連続の増加となった。なお、6月の売上高は前月比0.2%増(速報値)から0.3%増に上方修正された(2023年7月21日記事参照)

無店舗小売り、フードサービス、食品・飲料などが押し上げ要因に

業種別にみると、オンライン販売を含む無店舗小売りが前月比1.9%増の1,174億ドル(寄与度:0.31ポイント)と、全体を最も押し上げた。無店舗小売りは2023年に入って以降最大の伸びを記録し、アマゾンが7月中旬に実施した有料会員向けの大規模セール「アマゾン・プライムデー」が増加に寄与した。同社によると、2日間にわたって開催された同イベントの初日は、アマゾンにとって過去最高の売り上げを記録したという(ブルームバーグ8月15日)。次いで、フードサービスが1.4%増の911億ドル(0.18ポイント)、食品・飲料は0.8%増の822億ドル(0.10ポイント)と増加に寄与した。一方、自動車・同部品は0.3%減の1,335億ドル(マイナス0.06ポイント)と減少した。

今回の結果は市場予想を上回ったが、これを牽引した無店舗小売りは「アマゾン・プライムデー」による一時的な伸びの可能性が高い。また、このイベントでは、主に家庭用品や生活必需品の販売が好調だったため(2023年7月19日記事参照)、消費者の買いだめによる反動減も予想される。今後の見通しについて、コンサルティング会社EYパルテノンのグレゴリー・ダコ・チーフエコノミストは「経済やインフレに対する楽観的な見方が強まっているが、物価と金利が上昇する中、消費者は依然として資金面で慎重な行動をとっている。今後数カ月の雇用と可処分所得の伸びの鈍化は、消費者の慎重な姿勢が続くことを意味する可能性が高い」と、先行きに対して慎重なコメントを述べている(CNN8月15日)。

一方で、今回の結果について、小売りテクノロジー企業アプトスのニッキー・ベアード戦略担当バイスプレジデントは「インフレは依然として影響を及ぼしているが、家計債務の増加と高金利にもかかわらず、7月は消費者の全面的な反動は見られなかった。9月に学生ローンの支払いが再開されるまでは、反動は起こらないかもしれない」との見方を示した(CNN8月15日)。

また、消費者マインドも今のところ比較的強い状態を保っている。民間調査会社コンファレンスボードが7月25日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした7月の消費者信頼感指数は117.0と、6月(110.1)より6.9ポイント上昇し、2021年7月(125.1)以来2年ぶりの高水準となった。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は160.0(6月:155.3)で4.7ポイント上昇し、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は88.3(6月:80.0)で8.3ポイント上昇した(添付資料図参照)。

コンファレンスボードは消費者信頼感が増加した背景について、消費者がより楽観的な見方を示し、インフレ率の低下と労働市場の逼迫を反映している可能性が高いとしている。同社のダナ・ピーターソン・チーフエコノミストは「信頼感指数は、2022年の大部分で見られた横ばいの傾向から脱したようだ。信頼感の改善は全ての年齢層で顕著で、年間所得が5万ドル未満と10万ドルを超える所得層でも同様だ」と述べた。他方、同氏は消費者アンケートについて「旅行や娯楽などの裁量的サービスへの支出を減らす意向が引き続き報告されている一方で、今後数カ月間で医療などの必要なサービスや自宅での動画配信利用など安価なサービスへの支出が増えるだろう」と指摘した。

(樫葉さくら)

(米国)

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