「今後中国からの調達を減らす」が8割近く、米ファッション業界団体調査

(米国、中国)

調査部米州課

2023年08月04日

米国ファッション産業協会(USFIA)とデラウェア大学は7月31日、米国に本社または主要拠点を置くファッション企業を対象に実施した年次のアンケート調査の結果を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した(注1)。

これによると、回答企業の97%が中国から調達を行っており、その割合はベトナムと並んで国・地域別トップとなっている。一方、中国以外の国・地域が調達全体の最も大きな割合を占めると回答した企業は過去最高の61%となり、前年の調査(50%、2022年7月28日記事参照)を上回ったほか、新型コロナウイルス禍前の25~30%から大きく上昇した。今後2年間で中国からの調達額または調達量を「減らす」と回答した企業は78%に上り、前年調査に引き続き、中国への依存度を下げようとする動きが顕著だった。なお、中国からの調達額または調達量を「増やす」と回答した企業はなかった。USFIAとデラウェア大学は調査結果を受けて、「強制労働、米中関係、台湾問題などの非経済的な要因が中国からの調達を減らす理由になった」と指摘している。

対照的に、ベトナム、バングラデシュ、インド、カンボジアのアジア諸国や、中米6カ国(CAFTA-DR締約国)からの調達額または調達量を「増やす」と回答した企業は40%を超えた。アジア諸国からの調達を増やす理由については、「比較的大規模な生産能力を持ち、経済的・政治的に安定している」ことがその要因に挙げられている。USFIAのジュリア・ヒューズ会長は「ファッション業界は、新たな段階に入った経済的・外交的な不確実性に対して、調達先の多元化で対応していると総括できるだろう」と述べた。

強制労働リスク対応の必要性への意識高まる

2023年の経営課題について尋ねた設問では、「米国のインフレおよび経済見通し」が筆頭(70%、注2)となった。「サプライチェーン上の強制労働リスクへの対応」が僅差で2位(68%)、前年調査(4位、48%)から20ポイント上昇した。報告書は「サプライチェーン上の強制労働リスクへの対応は、2022年6月に施行したウイグル強制労働防止法(UFLPA)に伴い、2023年の米国のファッション業界が直面する引き続き重大な課題」と指摘している。

また、「サプライチェーン上の強制労働リスクを管理するために、あなたの会社はどのような措置を講じたか、または講じる予定か」との設問では、「ベンダーにより詳細なコンプライアンス関連の情報提供を求める」が筆頭(85.7%)になったほか、「ワークショップやそのほかの研修イベントに参加し、関連規制に関する理解を深める」(82.1%)、「リスクの高い国からの調達を意識的に減らす」(82.1%)、「USFIAなどの業界団体と緊密に連携し、最新の政策動向を入手し、ベストプラクティスを学ぶ」(78.6%)、「最終製品に含まれる繊維や糸の供給元を含めて、サプライチェーンのマッピングと理解に一層の努力する」(75.0%)がいずれも75%以上となった。

(注1)実施時期は2023年4~6月、対象は米国に本社または主要拠点を置くファッション企業30社の経営幹部。

(注2)回答者は複数の選択肢から上位5つの懸念事項を回答。

(葛西泰介)

(米国、中国)

ビジネス短信 9069fb865beee366