韓国銀行、経済見通し発表、2024年の成長率を2.2%に下方修正

(韓国)

調査部中国北アジア課

2023年08月31日

韓国銀行(中央銀行)は8月24日、2023年~2024年の経済見通しを発表した。2023年の実質GDP成長率は1.4%と、前回発表(2023年5月)の見通しと同じだった(2023年5月29日記事参照)。2024年は2.2%と、前回より0.1ポイント下方修正した(添付資料表参照)。

また、韓国銀行は足元の2023年第2四半期(4~6月)の経済状況について、「輸出や製造業などの不振が和らいできた。中国の景気後退の影響を受けつつも、IT景気の回復や中国人観光客の増加などにより、経済は回復傾向にある」と総括した。ただし、主要国の景気鈍化やエネルギー価格の動向といった不確実性は否めない状況だ。

実質GDP見通しを主な需要項目別にみると次のとおり。

  • 民間消費は、家計の債務返済負担や、対面サービス消費の低迷により、5月時点の予測より低い成長率にとどまる見通し。
  • 設備投資は、世界の製造業の景気回復の遅れや金融費用負担の増加により、2023年内は停滞が続く見通し。2024年は半導体企業の先端技術投資やサプライチェーンの多様化などにより、改善する見通し。
  • 建設投資は、不動産市況の景気鈍化や政府のSOC(注)予算縮小などにより、不振が続く見通し。
  • 財貨の輸出は、当面、回復の勢いは弱いが、年末にかけてIT製品を中心に回復基調を強める見通し。

2023年の就業者数は、製造業で減少傾向にあるものの、サービス業の労働需要の拡大、女性や高齢者の労働供給の増加で、通年で前年比29万人増加する見通しで、5月の予測値の25万人を4万人上回る。

2023年の消費者物価上昇率(前年同月比)は、6月(2.7%)と7月(2.3%)は2%台まで下がったが、8月以降は再び3%台になることが予測される。原油価格の推移や気象変動、高インフレなど不確実な要素が大きい。

2023年の経常収支の黒字額は270億ドルと、5月の見通し(240億ドル)を上回る予測だ。同年初は貿易赤字となり、輸出不振によって貿易赤字は拡大していたが、第2四半期に入り、輸出不振の緩和やエネルギー輸入の減少などにより、黒字転換した。2023年下半期は、中国の団体観光客が増加する見通しなどから、黒字拡大が見込まれる。

2024年の経済見通しについては、韓国銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「中国経済の成長鈍化などを反映し、経済成長率を下方修正した」と述べた。

(注)社会間接資本の略称。具体的には、道路、住宅、港湾、空港、鉄道、上下水道、公共的公園、文教施設、社会福祉施設、電気、都市ガス、病院、治山治水施設・海岸保全施設(ダム、堤防)など、生産活動や生活環境の基盤をなす社会的設備・施設をさす。

(益森有祐実)

(韓国)

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