2023年はプラスの経済成長に、リー首相の独立記念演説

(シンガポール)

シンガポール発

2023年08月22日

シンガポールのリー・シェンロン首相は820日、独立記念集会の演説(ナショナルデー・ラリー)で、国際経済の先行き不透明感が強まる中でも、同国経済が2023年はプラス成長を達成するとの見通しを示した。リー首相は、インフレが沈静化しているものの、過去の水準よりも物価高の状況が継続すると指摘した。

独立記念集会の演説は毎年、独立記念日(89日)の2週間後に行われるその年の政策方針演説に相当するもの。今回の演説は、中高年者への生活支援と、国民の約8割が居住する公団住宅(HDBフラット)の制度改革が焦点となった。政府の予測では、同国の65歳以上の高齢者が人口に占める割合は2026年に21%に達し、「超高齢社会」入りする見通しだ(2023年8月2日付地域・分析レポート参照)。リー首相は演説で、1973年以前に生まれた中高年者層を対象とした老後の生活や医療費の支援パッケージ(マジュラ・パッケージ、注)の導入を発表した。同パッケージの予算総額は約70億シンガポール・ドル(約7,560億円、Sドル、1Sドル=約108円)となる。

また、リー首相は2024年下半期から販売開始する新築のHDBフラットについて、都心部や人気の高い地区の住宅を対象に、転売期間の延長など規制を強化する方針を明らかにした。さらに、独身者の新築HDBフラットの購入について場所の制限を設けていたのを、2024年下半期から撤廃する。同首相は制度改定について、国民が将来の世代にわたりHDBフラットを購入しやすくしていくのが狙いだと説明した。

4世代指導者層への交代は計画どおり

リー首相はさらに、ローレンス・ウォン副首相兼財務相を筆頭する第4世代指導層への交代時期にも言及し、「新型コロナウイルス禍を経て、首相交代の計画は元どおりだ」と語った。リー首相は20222月に70歳になる前に首相交代をする意向を示していたが、新型コロナ感染流行が沈静化するまで首相の地位にとどまると述べていた(2022年4月18日記事参照)。同首相は国民に向けて「ウォン副首相率いるチームに現在、そして首相交代以降も最大限支持してほしい」と訴えた。

(注)マジュラ・パッケージは、(1)働く中高年者を対象に中央積立基金(CPF)の口座に毎年4001,000Sドルを政府が追加積み立て、(2CPFに最低限の貯蓄がない高齢者を対象にCPFへの1,0001,500Sドルの一時金支給、(3CPFの医療費口座への5001,000Sドルの一時金支給、からなる。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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