原子力発電所の増設を米国民の57%が支持、シンクタンク調査

(米国)

調査部米州課

2023年08月21日

米国では、原子力発電所の増設への支持が近年高まっていることがシンクタンク調査からわかった。

ピュー・リサーチ・センターは8月18日、米国内の発電源に関する調査結果(注)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、国内で原子力発電所の増設を57%が「支持する」と回答し、2020年の43%から14ポイント増加した。支持政党別では、共和党支持者が2020年の53%から今回67%に、民主党支持者が37%から50%に増加した。同センターは、原子力発電に批判的な立場の者は高コストや放射性廃棄物の取り扱いの複雑さなどを主張するが、支持者は炭素排出量の削減に原子力発電が重要な役割を果たす可能性があると主張していると分析する。

連邦政府のエネルギー政策としては、「原子力発電を推進すべき」と41%が回答し、「抑制すべき」が22%、「原子力発電を奨励すべきでも抑制すべきでもない」が36%だった。一方、連邦政府が「風力発電と太陽光発電を奨励すべきと」の回答は66%と支持が高かった。「電動自動車(EV)の使用を奨励すべき」は43%、「石油・ガスの掘削を奨励すべき」が34%、「石炭採掘を奨励すべき」は21%だった。

エネルギー源の見方を支持政党別で比べると、太陽光パネルと風力タービンでの発電を支持する民主党支持者はそれぞれ93%、91%、共和党支持者では70%、60%と高かった。一方、海洋石油とガス掘削、水圧破砕、石炭採掘については、共和党支持者の支持が高く(73%、68%、63%)、民主党支持者(25%、23%、16%)との意識の違いが目立った。

米国には現在93基の原子炉があり、さらに1基がジョージア州で建設中だ(2023年8月1日記事参照)。米国エネルギー情報局(EIA)によると、原子力発電の電力量は、2022年の米国の全電力の18.2%を占める。国際原子力機関(IAEA)のデータによると、米国内の立地は、南部に47基、中西部に22基、北西部に18基、西部に6基だ。

米国の原子炉の数は1990年の111基から減少傾向が続く。ピュー・リサーチ・センターはその理由として、米国や外国での原子力事故で危険性が認識されたことを挙げている。

(注)実施時期は5月30日~6月4日、対象者は全米の成人1万329人。

(松岡智恵子)

(米国)

ビジネス短信 3b0540c9afbb68d4