2023年上半期のフィンテック資金調達が4割減、生成AIが急伸

(シンガポール)

シンガポール発

2023年08月07日

会計事務所KPMGの最新調査(81日発表、注1)によると、シンガポールのフィンテック分野のテック企業が2023年上半期に調達した資金総額(注2)は93,400万米ドルと、2022年下半期に比べて41%の大幅縮小となった。2023年上半期のフィンテック分野の取引件数も84件と、前期(117件)と比べて減少した。

KPMGによると、世界全体のフィンテックの資金調達総額は2023年上半期に524億ドル(2,153件)で、前期比17%減少した。KPMGは、国際市場の先行き不透明感の継続に加え、2023年初頭の米国の一連の銀行の経営破綻を受けて、多くの投資家が「様子を見ている」と指摘した。

分野別で暗号資産が最大、生成AIが急拡大

シンガポールのフィンテックの分野別で2023年第1四半期に最も資金を集めたのは、20212022年と同様に暗号資産(クリプトカレンシー、調達額:23,470万ドル)だった。また、決済(ペイメント)も、11,960万ドルの資金を調達した(添付資料表参照)。同国では、決済サービス法やデジタル・トークン決済法が施行されるなど、暗号資産や決済サービスを行うための規制環境の整備が進められている。このほか、近く「ステーブルコイン(裏付け資産のある暗号資産)」に関する規制案の導入も予定されている(2022年11月8日記事参照)。

また、同期では、人工知能(AI)・機械学習分野の資金調達が12,900万米ドルと、急拡大した。KPMGは、特にサイバーセキュリティー、保険テック、資産管理の部門では生成人工知能(AI)の活用を反映したものだと指摘した。同事務所のグローバル・フィンテック主任、アントン・ルデンクロー氏は「金融サービスにおける生成AIの活用は依然、非常に初期の段階にある」と指摘。しかし、生成AIの効果的な活用を求める法人からの需要を受けて、生成AIに投資する投資家が向こう6カ月間で増えていくとの見通しを示した。

(注1KPMGの調査レポート「2023年上半期フィンテックの鼓動(Purse of Fintech)」は同事務所のサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからダウンロード可能。

(注2)資金調達は、合併・買収(M&A)、未公開株(プライベートエクイティー)やベンチャーキャピタル(VC)の取引を含む。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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