2022年1~9月のASEAN6カ国フィンテック資金調達が堅調、暗号資産が牽引
(シンガポール)
シンガポール発
2022年11月08日
シンガポールの地場銀行UOBと、会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、シンガポール・フィンテック協会(SFA)の最新レポート(11月3日発表、注1)によると、ASEAN6カ国のフィンテック分野のテック企業による2021年の資金調達総額は60億米ドルと、過去最高だった(添付資料図参照)。また、2022年1~9月の資金調達総額は43億米ドルと前年同期(45億米ドル)をやや下回ったが、前年の水準をほぼ維持した。世界のフィンテック資金調達額に占めるASEAN6カ国の割合は2018年の2%から、2022年に7%へと拡大基調にある。
2022年1~9月のフィンテック資金調達総額43億米ドルのうち、国別ではシンガポールが43%と最大で、次いでインドネシア(33%)、フィリピン(8%)と続いた。また、同期の資金調達総件数(163件)の21%を暗号資産(仮想通貨、クリプトカレンシー)が占めた。同分野のテック企業への投資が活発化している。シンガポールではフィンテックの資金調達件数(89件)の27%、フィリピン(8件)では38%を暗号資産が占めた。
シンガポール、暗号資産の投機的取引は制限へ
一方、シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は、暗号資産に対する個人投資家の投機的取引に対して、今後、規制していく方針だ。MASのラビ・メノン長官は11月3日、同国で開催されたシンガポール・フィンテック・フェスティバル(SFF)の基調演説で、「取引・投機のための暗号資産のハブにはなりたくない」と述べた。同長官は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)など「プログラム可能な通貨(programmable money)」の実証実験や、分散型台帳技術を活用したデジタル資産の決済、金融資産などのトークン化を振興するような暗号資産のハブになりたいと強調した。
MASは10月26日から、(1)暗号資産の取引で一般消費者が損害を受けるのを回避することを目的とした新規制案と、(2)「ステーブルコイン(裏付け資産のある暗号資産)」の新たな規制案について、関係者からの意見募集を始めている(締め切り日:2022年12月21日)。
(注1)同レポート「2022年ASEANにおけるフィンテック:金融の再創造」はUOBのホームページを参照。同レポートはインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国を対象としている。
(注2)一般消費者の存在回避を目的とした新規制案の諮問書はMASのウェブサイトに掲載。また、ステーブルコインの規制案の諮問書もMASのウェブサイト参照。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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