2022年の貧困率は6.5%、調査開始以来の最低水準に

(チリ)

サンティアゴ発

2023年08月08日

チリ社会開発家族省は7月27日、全国社会経済特性調査(CASEN、注1)の結果を公表し、2022年の貧困率が6.5%だったと発表した。これは、2020年比で4.2ポイント、2017年比で2.0ポイントの減少で、貧困人口は129万2,521人に相当する(添付資料図参照)。チリの貧困率がここまで下がったのは調査開始以来、初めてのこと。なお、本調査の中で「貧困層」および「極貧層」を定義するにあたっては、社会開発家族省が設定した、各世帯の人数ごとの貧困線(添付資料表参照)が利用されている。

貧困率を地域別にみると、チリ中部でサンティアゴ首都圏州より南に位置するニュブレ州(12.1%)、アラウカニア州(11.6%)、タラパカ州(11.0%)で貧困率が高く、反対に南部のマガジャネス州(3.4%)、アイセン州(4.0%)、サンティアゴ首都圏州(4.4%)では低かった。性別でみると、男性の貧困率は6.1%、女性が6.9%で、女性が男性を0.8ポイント上回った。年齢別では、4歳未満の貧困率が12.2%と最も高く、年齢が上がるにつれて下がる傾向にあった(注2)。また、所得的側面だけでなく、教育や健康、生活水準などの要素を考慮した上での貧困率を示す多次元貧困率は16.9%となり、2017年と2015年の同率20.3%から3.4ポイント減少した。

同調査の結果を受けて、チリカトリカ大学・ラテンアメリカ経済社会政策センター(Clapes UC)のセルヒオ・ウルスア氏は「貧困率の低下はチリにとっていいニュースではあるものの、新型コロナウイルス禍の補助金支出による影響が大きく、実質賃金の改善や雇用の増加によるものではないということに留意する必要がある。経済成長が今後停滞するような予想下では、これらの補助金支出のレベルを維持することは難しく、チリは大きな課題を抱えている」と指摘している(「エル・メルクリオ」7月28日)。

(注1)社会開発家族省が統計局(INE)やチリ大学などと協力し、2022年11月1日から2023年2月2日の間に16州に住む20万2,231人から回答を得た結果に基づく。

(注)ここで述べている年齢別とは、年齢別でみたときの全体人口における貧困率のことで、例えば4歳未満であれば、4歳未満の全体人口における貧困に分類された4歳未満の人口が12.2%となっているという意味。

(岡戸美澪)

(チリ)

ビジネス短信 1b62cb8341d4e2f2