国際貿易とグローバル化や米中対立の行方を懸念、シンガポール副首相

(シンガポール)

シンガポール発

2023年08月21日

シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は814日、政策研究所(IPS)主催の会議での演説で、同国が直面する課題として、国際貿易システムとグローバル化の変化と、米中対立がもたらす影響を挙げた。ウォン副首相は「この先、シンガポールのような小国を取り巻く外部環境がより厳しくなる」との懸念を示した。

同副首相の発言は、IPSが主催した、同国のリー・クアンユー初代首相の生誕100周年を記念した会議でのもの。同副首相は「各国が過去数十年間享受してきた自由貿易と相互経済協力のコンセンサス」が終焉(しゅうえん)を迎えたと述べた。特に米国やG7において、「国家による積極的な市場介入という新たなパラダイムが浮上している」との考えを示した。同副首相は「貿易と投資のあり方は(これまでの)経済ロジックではなく、地政学や安全保障上の観点から形づけられるようになっている」と強調した。

同副首相は演説後の対談の中で、大国による企業誘致の「補助金競争」に、小国のシンガポールが太刀打ちすることはできないと語った。その事例として、ドイツ政府が米国インテルの半導体工場設置に100億ユーロを補助するとの発表(20236月)を挙げ、同補助金がシンガポール貿易産業省の年間予算規模に相当すると指摘した。

米中関係が国際貿易やグローバル化の行方を決定

さらに、ウォン副首相は、国際貿易やグローバル化の行方を決定付けるのが最終的に、米中関係だとの見方を示した。同副首相は、米国と中国がいずれも戦争を望んでいないが、「2国間の緊張、または競争の激化が米中関係を特徴付けるものになる」と述べた。その上で、「(米中間の競争がもたらす)想定外、または危険な結末に備える必要がある」と強調した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

ビジネス短信 0f9440b068dee462